水廻し(くくり加水)
更新 040104
初稿 011221
分散加水でできたパン粉状のそば粉は、内部が湿っていて、外側が比較的乾いた状態になっています。
ここにさらに加水して攪拌してそば粉の表面を湿らせると、パン粉のそば粉粒子同士がくっついて大きな固まりになります。さらに加水すると、そば粉全体が一個の玉になります。この過程がくくり加水です。
加水量は、先に分割した10%--7%-->3%の部分です。最後の3%は、様子を見ながら加水して残すことがあります。逆に足らない場合は、調整用に用意した別の水を使います。
くくり加水はそば粉をひとかたまりにする作業ですが、最大のコツは、けっして力をいれて固めようとしないことです。「そば粉に揺さぶりをかけて、そば粉が自ら集まるのにまかせる」これが水練り生粉打ちの極意です。
ただし、だらだらと粉に触っていると、力も入れていないし加水も不足なのに、そば粉が玉になってしまうとがあります。このような玉は固くてひび割れやすく、これも失敗のひとつです。したがってくくり加水も、ポイントはテンポのよい短時間の作業です。
ではくくり加水の実際です。
まず分散加水が終わった粉に、「10%」を加水します (ここでは11ccです)。
初心者はコップに水を分けておいたわけですが、慣れてきた方は、残っている水の半分程度を加水すると考えればOKです。
加水は細く糸をひくように、大きくらせんを描いて落とします。この段階では実は水を落とした軌跡は見えませんので、上の画像は見やすくするように乾いた粉に水を落として撮影しましたが、こんな感じで細く大きく落とします。
また画像では水差し容器を使っていますが、普段私は、ボウルの注ぎ口から直接落としています。要は細く糸を引くように落として、一カ所に水が偏らないようにします。
水を落としたら再び攪拌ですが、まず捏ね鉢の両端から指を入れて、そば粉を一旦中央に寄せます。そして左右から交互に揺すります。これで水にそば粉が被ります。水にそば粉がかぶったら、再び指先を立てて、捏ね鉢の底面をこすりながららせん状に動かして、ガーっと攪拌します。
15〜20秒程度攪拌したら、そば粉を中央に寄せて左右から両手ですくい、そしてこすり合わせます。
くくり加水のこすり合わせは最初は本当にそっとやります。水を含んだそば粉のやわらかい固まりは冷たい固まりに感じられると思いますが、これを乾いた粉とこすり合わせて崩して行くのです。
この段階では、そば粉を絶対に加圧してはいけません。そば粉に加わるのは、そば粉同士を互いにこすり合わせるための力だけです。「絶対に加圧しない、捏ねない」。これが極意です。もし冷たい水を含んだダマが破裂して手にべとつくとしたら、それはもう力の入れすぎです。その水は手につけるのではなく、乾いたそば粉にあげるのです。
約1分間粉をさばいて、ある程度水分が分散して最初にあった冷たい固まりがなくなったら、「こすり合わせ」を「揉み合わせ」に変えます。またここからは両手は平行移動になります。つまりキリを揉み込む時の手の動きです。
(ここまでで加水開始から2分30秒)
するとそば粉はダマになってきます。さらに1分弱作業を続けると、大きめの固まりと細かい粉状の部分が混在してきます。ダマの大きさは1〜2センチ程度でしょう。
そこで大きな固まりを手前にかき寄せて、細かい部分を奥に残します。
(ここまでで加水開始から3分30秒)
ここで2回目のくくり加水 (全体では3回目の加水) をします。つまり「7%」を加水するわけです。この場合8ccです。
加水は上の画像の奥から半分程度(つまり粉状になっているところ)の部分にします。ダンゴ部分は加水しません。
粉状の部分に水を落としたら、その部分を左右から指先で交互に押すように、手早く左右に攪拌します。すると細かい粉たちは表面がしっとりして、つぎにネバっとすると思います。
我慢してさらに攪拌するとべとつきがおさまりますので、再び両手でこすり合わせます。するとそば粉は、1センチ〜ピンポン玉程度おおきさのダマになります。
(ここまでで加水開始から4分程度)
そうなったら今度は手のひらを下に向けて、捏ね鉢のなかでそば粉をゴロゴロと転がします。すると上の画像のように、おおむね大きな固まりになり、多少細かい粉が残っている状態になるはずです。団子も画像ではかなり固いものにみえますが、実はダマが水でくっついただけのものですから、まだボロボロの状態です。
(ここまでで加水開始から4分30秒程度)
この状態でだらだらとこねまわしてはいけません。硬いまままとまってしまって、菊練りで難儀します。そば粉をごろごろ転がしながら、ただちに残りの水(3cc)を落とします。
実は慣れて来ると、ここは1ccずつ落としては転がし、転がしては落としてそば粉が固まるのを待つのがよいのです。これを私はそば粉との対話とよんでいます。しかし初めての方は加減がわからないはずなので、最後の3%を全部落としてしまってください。
最後の加水をすると、ダマの表面が濡れて一瞬ベトっとして、次の瞬間、ダマ同士がくっつき始めます。この瞬間を見逃さずに丁寧に転がしながらくっつくのを助けてあげると、ダマは一つのそば玉になります。
滑りの悪い捏ね鉢では、ゴロゴロ転がしているだけでそば粉は玉になります。しかし、滑りのよい塗り物の捏ね鉢や、ステンレスの捏ね鉢の場合はダマが滑って固まりにならないことがあります。玉の表面が濡れて白くなっているのにまとまらない場合は、玉を手で持ち上げて、ほかのダマの上にかぶせるような感じで転がすとひとかたまりになります。
最後の3%を加水してもひとつの玉にまとまらなかった場合は、調整用の水の出番です。1%ずつ慎重に足しては転がしてください。そば粉が白樺で、計量が正確なら、ほどなくまとまるはずです。
玉ができたらこね鉢の内周に飛び散った粉を全部玉にくっつけながらさらに転がします。この最後の段階でそば粉やそばダマの小粒を残しておくと、次の菊ねりの障害になりますので、念入りに玉に繰り込んでください。
ただし手のひらから落ちたような乾燥した硬い粉は、練り込んでしまうとそば切れの原因になりますので、玉に繰り込まずに捨てます。
玉をゴロゴロ転がしてこね鉢の内周がきれいになったらくくり加水は終了です。
(ここまでで加水開始から約5分)
ここで一度手を洗って、手にこびりついた乾いた粉を落とします。
(捕捉) そば粉が「白樺」でない場合
そば粉が指定外の場合は、加水率を50%と想定して加水するしかありません。その場合、二回目の加水 (くくり加水の一回目) でそば粉がまとまってしまう場合があります。加水率45%のそば粉は、ここで最適加水率に達してしまうからです。その場合は加水をそこで打ち切り、菊ねりに移ります。
また50%に達してもまとまらない場合もあります。その場合は、あと10%分の水をもち、3%ずつ追加加水をして行きます。もちろん初回はうまく行かないかもしれませんか、上記の白樺のケースを参考になんとかまとめてください。
そして残った水の重さを測り、一回目の加水率を計量しておきます。そして蕎麦を食べてみれば、その玉が緩すぎたか固すぎたかがわかると思います。そうしたら次回は計量した水の量を1〜2%増減して、もう一度打ちます。そういうことを2〜3回やるうちには、必ず最適点に達すると思います。
なお、白樺を使っても、初回はずれるかもしれません。そば粉も厳密には毎回含水率が違いますので、多少は毎回違うからです。したがって緩かったら減らす、固かったら増やすということでやってみてください。
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