麺棒の製作


更新 081221
初稿 030907


1. 麺棒を自作する

麺棒はただの木の丸棒。しかしその棒の善し悪しで蕎麦のデキが変わってしまいます。特にヒノキの麺棒は軽いので扱いが楽。また、適度にしなやかなので、手加減で生地を部分延ばしがある程度できることを覚えると、もうやめられません。

買うと安くないヒノキの麺棒。棒蕎麦MLにいろいろなことを書いてくださる平林さんというかたのホームページに自作麺棒を作ろうというページがあり、かないまるにも作れそうなので、このページを参考、ホームセンターで売っている400円の角材で作ってみました。

簡単な作業でなかなかいいものができ、ストレス解消にもなります。ご紹介しましょう。


2. ホームセンターの角材

ホームセンターにある角材は、法人ごとに樹種がさまざまです。たとえば私の近隣ではユニディーがヒノキの角材、マツモトキヨシホームセンターがエゾマツといった具合です。基本的には柾目の角材なら麺棒は作れると思いますが、今回はユニディーの28ミリ角のヒノキの角材です。


3. 素材はどのように選んだか

ホームセンターの角材というのはまさに玉石混淆です。原材の丸太を無駄なく製材し、角材になったものは全て販売してしまう感じ。そこでなるべく柾目が通っているものを選びだすことになります。

実際の選びかたとしては、まず木口を見ました。木口になるべく年輪がたくさん詰まっていること。また等間隔に詰まっているものが良材です。

年輪の向きは、一辺に並行であったり、45度であったり、あるいは中間の角度だったりします。



これが今回の選定品で、木目が45度に通っています。これを四方柾目といいますが、製材後角材が最も曲がりにくいそうです。このほか一辺と並行に木目が走っているものも曲がりにくいそうで、二方柾目というそうです。



次に側面です。この画像を右の方まで見てください。ほとんど木目が曲がっていません。このように柾目の木目が木口から木口までまっすぐ走っているものが良材です。今回購入したものは、ユニディーに在庫していた50本ほどの角材中最良の一点です。

なおこの材は四方柾目ですが、四方か二方かよりは柾目がまっすぐかどうかのほうを優先すべきだと思います。また今回は91センチ材で良材が一本だけ見つかりましたが、182センチ材にはまだいいのがありました。182センチ全部がまっすぐでなくても、中間が良ければ使えますので狙う価値はあると思います。


4. 作業台を作る

では製作です。まずかんながけのための作業台を作ります。電動ドライバと鋸が有れば20分程度で作れます。

材料は910×12×45のエゾマツ材 (180円)が二枚。910×24×24のエゾマツ角材 (200円)が一本です。



作業台は角材に板をビス止めした簡単なものです。板の間隔は15ミリ。



作業台にはこんな感じで角材を乗せます (ここに乗っている角材はエゾマツ材の角材で、麺棒用ではありません)。



麺棒の乗るミゾのアップです。

まず板材のコーナーは、軽くかんながけして落とした方がワークが安定しました。また横木のある場所 (三カ所) に両面テープを貼り付けました。これもかんながけでワークが動かないようにするためです。

なおこの画像は両面テープの場所を見やすくするために剥離紙をはがさないで撮影してありますが、もちろん実際ははがして使います。


5. 墨入れ

購入したヒノキの角材は28ミリ角でした。これをまず八角形にするための墨入れをします。



墨入れは、角材の幅を1対1.4対1に三分割するところに引きます。つまり角材の幅の端から1/3.4のところに引きます。今回の角材は28ミリ角なので、計算上は8.2ミリ。実際は8ミリ少々のところに線を引きました。



また木口には対角線を引きました。これは作業台上で鉛直線に見えるので、角材がしっかり45度に置かれていることを確認するのに役立ちました。また対角線の交点を利用して正確な中心線も引いておきました。これは材料が8角、16角になるにしたがって形が正常であることの確認に役に立ちました。


6. かんなの手入れ

私のかんなは中学の時の技術家庭科の教材で購入したものです。父親の遺品もありましたが壊れてしまいました。

技術家庭科用なので大したものではなく、今回出してみたら案の定狂いが来ていました。ただ30年以上前のものなので素材は比較的良いもので、修正してみたところ立派に使えました。

刃もこぼれていて無茶苦茶でしたが、荒砥から3000番の仕上げ砥石まで5段階の砥石で研ぎ上げて使えるようにしました。

このかんなの刃をきちんと研いでおくことはとても大切です。理由は、ほぼ柾目の素材を使うので、素材の途中で順目/逆目が変化するため、切れ味の良い刃で一気に削る必要があるからです。


7. かんな工程、その1 … 8角形にします

ではもっとも大切なかんながけの工程です。



縁台の上に作業台をおいて、その上にワークをおいてかんながけをしています。角を削るので最初は片手で十分ですが、仕上がり付近になると負荷が重くなるので、両手で作業しました。作業台は縁台に両面テープで固定してあります。



8角形になったところです。左下に矢印が見えますが、これはかんながけをした時に順目だった方向をメモしたものです。

というのも、麺棒の素材はほぼ柾目の角材ですが、実際にかんなをかけてみると順目か逆目かを手に感じます (素材の上半分と下半分で順目と逆目が変わるところもありました)。そこで、概ね順目となる方向で仕上げて、その方向を材料に書いておきます。


8. かんな工程、その2 … 16角形にします

8角形になった素材を作業台に戻し、角を落として16角形にします。



作業に入る前に、8角形の麺棒の外形にグルグルとらせん形に線を引きます。これは削った角を見やすくするためで、かんなで引いた幅がよく分かるほか、ヤスリ工程でも作業終了の目安になります。

かんながけは、8角形にした時に書いた矢印を参考に一気に仕上げます。つまり削ろうとする角のすぐ近くに書いてある矢印の方向にかんなを引けば逆目事故になりにくいわけです。このかんながけは、一カ所あたり数回引けば終わりでした。



16角形になりました。なんかカッコいいですね。


9. サンドペーパー

この16角形の材料を、サンディングで丸くしてゆきます。使ったサンドペーパーをご紹介しましょう。

9.1. アルミナ砥粒の布ヤスリ



40番と60番を使いました。布ヤスリと言ってもいろいろありますが、これは全体に赤い感じのものでケイヨーD2というホームセンターで買ったものです。ベースの布生地が柔らかくて巻き付けやすい上、切れ味がよくて使いやすいものでした。



これが裏面。メーカー名などはありませんが砥材がアルミナであることがわかります。電気コートとは、おそろく砥粒を塗る時に静電塗装的な手法を使い、表面を均一にすることを謳っているんだと思います。

9.2. 空研ぎペーパー



仕上げに使ったものです。すごく切れ味がよくて棒がツルツルになります。



砥面のクローズアップです。砥粒はシリコンカーバイト。鳥取砂丘のような白い模様が空研ぎペーパーの特徴である「目詰まり防止剤」です。

調べてみましたが金属せっけんが使われるようです。金属せっけんとは、せっけんと脂肪が結合したもので、風呂桶の縁に付着する白い粉と同じものですね。これが砥粒の間を埋めていて、削られた素材が粒間に引っかかるのを防止する仕組らしいです。

使ってみるとビックリするほど削りやすく、削りカスがヤスリに付きません。砥粒も全然落ちませんでした。

9.3.耐水ペーパー

このほか滑面仕上げで600〜1500番の耐水ペーパーを使いました。ごく普通のものです。手持ちがあったので使いました。


10. 削り作業

まず40番の布ヤスリで、16個の角を大略とります。



布ヤスリは半裁して使いました。麺棒にはダンボール紙といっしょに巻きつけました。ダンボールの大きさは元の布ヤスリと同じくらいの大きさです。

画像で右端からダンボールと布ヤスリを一緒に麺棒に巻き付けますが、ダンボールには両面テープが貼ってあります。これはダンボールのなかで布ヤスリが滑らないようにするためです。

ここのところ麺棒は3本ほど作っていて、ダンボールもいくつか試しましたが、薄めの柔らかいものが使いやすいことがわかっています。また普通のボール紙も試しましたが、これは巻きがずれてしまい全然ダメでした。ダンボールを巻くと適度にガタガタになるので巻きがずれないのがいいようです。



なお巻き付けはギュっという感じでやりますが、そのままではしごいても動きません。そこから1〜2ミリ戻すと動くようになります。



サンディング中は握力でダンボールを適宜締めますが、握力で削るわけではなくて、実際は上の画像のようにダンボールを麺棒に対して回転方向に力を入ます。

この状態で麺棒を回転させながらスライドさせると、ダンボールから切り子が吹き出し、やがて麺棒は丸くなります。

スライド幅は角材の端から中央付近までです。これを両サイドを交互に削ります。

最初に使う40番は、先に角材の段階でグルグルと書いた線が9割程度なくなるまで削りました。半裁の布ヤスリを方向を変えて二回使い、もう半裁を二回、都合四回ヤスリを変えた程度。時間にして30分ほどの作業です。

そのあとヤスリを60番に変えて同様に作業して、グルグル巻きの線が完全に見えなくなったところでこの工程を終わりました。

後は仕上げ削りですが、その前に木口の仕上げをしています。


11. 木口の加工

この麺棒には、加工前に両端面に*を書きました。これをサンダーを使って60番の布ヤスリで取り除きました。木口はインクがしみこむので、結構大変な作業でした。

次にエッジを落とします。100番の布ヤスリを硬質スポンジに巻き付けて手加工で仕上げました。

最後に120番を硬質スポンジに巻き付けて、木口面をなめらかにしました。木口の仕上げはキリがないのでこれでおしまいです。


12. 仕上げ削り

麺棒の仕上げ削りは、空研ぎペーパーの120番、240番で行いました。すごく使いやすく、耐久性のあるペーパーでびっくりします。半裁を一回ずつで十分です。

いくら削ってもキリがないですが、それぞれ10分程度仕上げて打ち切りました。最後はツルツルしっとりという感じに仕上がっています。


13. 仕上げ削り後の外観

では240番までのヤスリがけで概ね仕上がった麺棒をご紹介しましょう。



これ端部付近です。木目がなかなかきれい。またヒノキ特有の赤身感もいいですね。



全体の感じです。この画像の左端が上記の端部を撮った側です。左から木目が3本流れています。この麺棒の木目の流れはこの裏側で1本ありますが、あとは木口から木口まで20本以上の柾目が通っています。

真円度、直線性は加工直後ということもあり非常によく、平らな面を軽い斜面にして転がすと、わずかな斜度で静かにころがります。

この程度仕上げれば、白木で使うのならもう使えます。かっぱ橋で買ってきたヒノキの麺棒は、だいたいこの程度の仕上げでした。


14. 滑面仕上げ

引き続き滑面仕上げです。600番、1000番、1500番の耐水ペーパーで、木地を徹底的に磨きます。

ペーパーは麺棒にU字形に巻き、クルクルと巻き付けません。これはペーパーの端部でキズをつけないためです。

また、ペーパーの裏に両面テープを少し貼っておくと、ペーパーがつかみやすく作業が楽です。



これが1500番まで磨いた状態です。240番までの仕上げではまだ光がありませんが、ここまで来るとツルツル、ピカピカです。

このあと胡桃油を塗布しますが、その結果はいずれ追記しましょう。


15. まとめ

いかがですか。ちょっと難しそうに見えるかもしれませんが、やってみると実は簡単で、作業そのものも軽い作業です。みなさんも、愛着の一本を自作してみてはいかがでしょう。


16. 謝辞

かないまるが参考にした麺棒作成ページを書かれた平林さんは、ご自宅の火事で亡くなられ、今は天国にいらっしゃいます。
(ホームページは関係者の努力で残されています)。
たくさんの役に立つ情報を提供してくださった平林さんに深く感謝いたします。
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