起こし庖丁技法用のこま板
初稿 031012
コラム編c24番で解説した、起こし庖丁技術で切るためのこま板です。とりあえず文献上では見たことがないので私の発案ということにしておきます。
こちらのページでは自作方法を解説しますので、使い方はコラム編c24番をご覧ください。関連して、蕎麦打ち編u8番の切りの項もご覧ください。
1. 枕材
さて、工作編k01番もこま板を解説していますが、こちらは枕が2ピース構造で、どなたでも比較的簡単に作ることができます。今回のこま板も同じ構造で作れます。
しかし今回は、枕をワンピースにすることにも合わせて挑戦してみました。キワ鉋というのを使って、枕材に段を作る加工してから板とつなぎます。
また枕材も硬いものに挑戦してみます。新木場に「もくもく」という材木中心のホームセンターがありますが、今回はここで楽器用素材のジャガランタの角材を仕込んできました。
結構固い素材ですが、明るい色で模様もなんだか味があります。
断面形状は22×20ミリ。使えそうです。ただ素材が固いので製材のときのこぎりがうねったようで、面がよれていました。そこでまずやすり加工で面を仕上げました。
ホームセンターで拾ってきた端材 (50円) に空研ぎペーパーを両面テープで貼り付けて角材をこすりつけます。80→400番と仕上げて行きますが、200番以上で素手では滑るので、画像ではゴム手袋をしています。約1時間でツルツルになりました。
2. キワ鉋とは
これがキワ鉋というものです。普通の鉋との違いは、本体の側面まで刃がついていることです。また定規がついていて、段の深さを簡単に決められます。
これがキワ鉋による段加工のイメージです。角材の一部を残して削り下ろすわけです。定規は今回は15ミリにセットしています (キワ鉋にはこの定規がないものもあります)。
3. L字段加工
この鉋で角材を削るわけですが、角材が動くと作業ができません。あとで出てくるワークベンチでもいいのですが、軽くてぐらついて作業がやりにくいので、この行程用に作業台を作りました。
簡単なもので、端材に端材をネジ止めしただけのものです。角材が乗るところに両面テープを貼り、ワークを固定して作業して行きます。
まず2回ほどキワ鉋を引きます (何度も引いてはいけません)。これはキワ鉋の定規だけに頼って幅を出します。
これで軽い段がつきます (角材にスジが見えているのが段です)。ここに金属定規をあてます。
定規をあてたら、L字の立ち上がりと定規の立ち上がりの間にカッターを差し込み、カッターを引きます。
図示するとこんな感じ。
さらにキワ鉋を引きます。カッター目があるので、鉋クズがきれいに出てきます。
ある程度段が深くなったら、カッターを引き足します。二回目からは段が深くなるので金属定規は要りません。カッターはやや右に傾けて、深くなる方向に筋付けします。
段に合板をあててみて、段の深さをみます。段は組み合わせる板の厚みより僅かに深くします。
なお今回も板はシナ合板を使います。大きさは300ミリ×320ミリ×4ミリです。この時点でこま板の幅を320ミリにしていますが、320ミリのこま板を作るわけではありません。一度幅を広く作り、のこぎりで幅を狭めて290ミリ前後にします。これは硬い枕材と板の幅をきれいに合わせるためです。
段が合板より深くなったら、角材を90度回して、鉋が当たっていなかった面を鉋削りします。
作業が終了しました。
4. 角材と合板の接着
接着剤をつけて締め金具で締めたところです。今回は木工ボンドを使っています。当て木に割り箸を使いましたが、幅不足で合板にめり込んで合板が凹んでいました。凹みに水をたらして一晩放置したら治りました。
5. 一次仕上げ
角材は長さが360ミリ程度ありましたので板幅から飛び出しています。そこでまずこれをのこぎりでさくっと落としてから底面の仕上げにかかります。つまり幅はまだ320ミリです。
まず角材の段が板より高くなっていますので、これを鉋とペーパーがけで平滑に仕上げます。このあと全体をペーパーがけして仕上げます。
一次仕上げ終了時点のこま板です。
実はこの状態でカシュー塗料で一度塗装をしました。塗装によりこま板がどんな感じになるか知りたかったからです。
しかし塗装すると板が滑りすぎて、こま板として使いにくいことがわかりました。そこでこの塗装は、このあとの二次仕上げでほとんど落としてしまいました。
6. 二次仕上げ
二次仕上げです。ここで枕の上端が外に飛び出しているような角度をつけます。
ここからの作業にはワークベンチを使いました。簡単な素人用のもので、定価は5000円以上するみたいですが、あまり売れないようです (そうだろうな…)。最近とうとうマツキヨホームセンターで1000円台まで落ちていましたのでゲットしました。
二枚の天板は万力のように締めることができ、ワークをはさむことができます。
最初にまず杉板を板の部分に当ててワークベンチに固定して、のこぎりで端を落とします。これは枕と板の面をひとつにして精悍な仕上がり感にするためです。
ここで杉板を寸法どおりに当てますが鋸はどうしても寸法どおりには切れません。そこで少し幅広くカットしてから、80-120-240のペーパーがけで寸法を直します。このとき80番で杉板の面スレスレまで削り、そのあと120-240番で杉板ごと平面に仕上げればきれいに直線に仕上がります。
次に枕に傾きをつけます。これが一次仕上げ後の枕ですが、これを点線の部分まで鉋とヤスリで落として行きます。
まず鉋がけで枕の不用部分の9割ほどを緒とします。
次に杉板と端材を使って、枕に角度をつけてワークベンチに挟みます。このあと、この画像の上面を杉板と枕を一緒にペーパーがけして仕上げるわけです。
ただいま仕上げ中。80番の布ヤスリで形を整え、120-400番で仕上げます。
このあと、
・板全体を120番でヤスって一次仕上げの塗装を大略落とす。
・全体を400番まで仕上げる。
・枕の上面と庖丁面をさらに1500番まで仕上げる。
以上の工程で完成です。庖丁面を1500番まで仕上げるのは、そば粉が付着しにくくするためです。
7. 出来上がり
できました。塗装はほとんど落として白木の状態に近くなっています。
枕と板の合わせ目 (裏面) です。枕材は0.5ミリ程度しか残っていません。これは一次仕上げの状態で使ってみたところ枕が少し重かったので、ギリギリまで削り落としたからです。
後ろのソリの部分です。合板なのに芯材が白っぽく見えますが、このシナ合板は変わっていて、実は芯材もシナでできています。ソリの部分は斜めに削るので、普通のシナ合板はこの部分がきれいになりませんが、この素材だとなかなかきれいです。
できあがった枕部分です。見事に上端が飛び出したものができました。
実際に切った様子は、コラム編c24番をご覧ください。
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