木口まな板を使ってみる

1. オーストラリア製のまな板


初稿 041211


蕎麦職人の間で最高のまな板とされているのは、ヒノキやスプルースを使った木口まな板です。

角材をサイコロ状にカットしてから寄木細工をして板状にして、表面を木工用ルータなどで平面に仕上げたもので、表面全部を木口にしたものです。

木口まな板は、庖丁が木口断面にあたるときに僅かにまな板面内に食い込むことができるため切れ味がよく、また庖丁にもやさしいとされています。

さて、すでに書いたとおり、実は私はあまりまな板を使っていなません。

まな板は一度買ったことがあり、買った直後は結構使っていました。しかし、合羽橋の「Sサロン」で買ったそのまな板は、購入後すぐに反り始め、半年で完全に使えなくなってしまいました。決して高級品ではありませんが、平面度が命のまな板を生木で作ったのが原因でしょう。そのまま放置したら最近はかなり戻ってきましたが、一時は1センチ程度も反っていました。

結局まな板を買って損をしたという思いも手伝い、以後、延し板の上で直接切るようになってしまいました。延し板はキリのランバーコア製ですが、購入後全く反らないので、十分切れるのです。

「延し板で切ると延し板が痛む」と書籍には書いてありますが、蕎麦打ちでは極めて幅の広い庖丁を均一に板に当てるので、素人が使う頻度ではそうそう痛むものでもありません。今でも普段、高々200グラムの一人分の蕎麦を打つときは、延し板の隅のほう (下駄足のすぐ上のあたり) を使って、サクっと切ってしまいます。

たまに柔らかめの生地を細切りにする場合など、平面性が必要なときは、工作編にご紹介したかないまる流簡易型まな板が登場します。こちらは作成後一年以上経ちましたが、全く反りません。原価500円。うふふ。

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というわけで、通常私はまな板をほとんど使わないのですが、「木口まな板」なるものだけは「次元の違う切れ味」と聞いており、機会があれば使ってみたいと思っていました。

そうしたなか、先月 (2002年11月)、シドニー (オーストラリア) に出張したとき、昼食後ショッピングモール内をホテルに向かって帰る途中、料理器具のバーゲンセールに出くわしました。

面白そうなので入ってみると、寄木細工のまな板が目にとまりました。木口まな板なのです。よく見ると、その辺にあるまな板の半分くらいが木口まな板で、いろいろなサイズや材質のが並んでいます。

日本では木口まな板は非常に特殊ですが、オーストラリアではわりと一般的なのでしょうか。興味半分に一枚買ってみました。



サイズは約42センチ×30センチ×2センチ。同じものが12月11日現在 オーストラリアのヒョッピングサイト に載っています。

定価100豪ドル。このサイトでの価格は59豪ドル。そして私が買ったバーゲン価格は49豪ドルでした。豪ドルは1ドル80円くらいですから、約4000円のまな板ということになります。



まな板には PEER SORENSEN という焼き印があります。オーストラリアでは有名な木製キッチン用品ブランドのようです。

素材はオーストラリアン・ブラック・ウッド (豆科アカシア属) で、水に強くて腐りにくいので衛生的。なおかつ End Grain (木口) なので庖丁にやさしい (と、ラベルに書いてありました)。「栽培材なので環境を壊していない」とかなり強調した表記もあり、オーストラリアが自然保護先進国なのだなとも思わせます。


・使ってみる

ブラックウッドというのは、船舶作成やフローリングにも使われるかなり硬い素材です。水にも強い。だからこそ丈夫なまな板になるというわけです。ただし、クラリネットを作る材料もブラックウッドといいますが、これはアフリカ産で違う樹木です。

さで、ではこんなに硬い (ほんとに硬いです) まな板で本当に「切れる」のか。また木口にしたら本当に庖丁にやさしいのか。そこで帰国して早速蕎麦打ちに使ってみました。


・まずは打粉を敷かずに切ってみる

まずは通常生地の下にまいて平面性を改善するための打粉を使わず、まな板面に直接生地を置いてどのくらい切れるか試してみることにしました。



生地は300グラムで四つ畳みです。切れ味を試すために、細挽きのそば粉を緩目に加水して薄い生地にしてあります。つまり一番切りにくい生地です。



切り始めました。すごい。本当によく切れます。また、まな板が庖丁に当たると、ピタっと吸い着く感じで、刃が動かなくなります。



切った蕎麦を開いてみましたが、全くスダレにならず、綺麗に切れています。庖丁が木口の繊維に食い込み、生地を完全にカットしているわけです。

しかし庖丁にやさしいかというと、少々問題がありました。庖丁がまな板面から離れる瞬間に、キチッ、キチッという異音が出ますし、手にも気持ちの悪い感触が来ます。庖丁を降ろしたままの角度で持ち上げれば音はしませんが、蕎麦きりは庖丁の回転でこま板を進める動作がありますので、そういうわけには行きません。

また、蕎麦の状況に応じて庖丁にちょっとでも大きな回転力がかかると、手元の法から「チャキーン」という感じの大きな音が出ます。これはまずいですね。硬い木口が庖丁の刃先を横に引っかいていることになります。


・打粉を入れてみました



そこで一旦生地をあげて、生地下に打粉を入れてみました。しかし結果にほとんど差はありませんでした。相当力を抜いても切れるんですが、それではこま板が進みません。



ただ、とにかく切れ味はすごいです。少し切り進んで見ましたが、切れた蕎麦が庖丁にくっついて上がって来るほど粘っこい生地で、ときどき面線が持ち上がって、それを振り落としながらの作業でしたが、それでも見事にスダレにならずに切れてしまいました。


・結論

カメラをかたづけたあと、残った生地を普段と同じように延し板の上で切ってみましたが、切れ味が鈍く、打粉を敷いてもスダレになりました。スダレ防止がウリの「ゴムまな板」も持っているので、久しぶりに出してきて切ってみましたが、やはりスダレが多少残りました (ゴムまな板の保存方法は水平で完璧です)。

というわけで、木口まな板がものすごい切れ味をもたらしてくれることがわかりましたが、このブラックウッド製は蕎麦庖丁の寿命を考えると、蕎麦打ちに使うのは無理のようです。

なのでこのまな板はお蔵入りとなりました (キャンプ用などには最高だと思います。欲しい方がいらっしゃったら3000円+送料でお譲りしますので、メールください)。おかげさまで買い手がつきました。

しかし木口まな板は確かによさそうです。そこでスプルース製の木口まな板を購入することを決意。注文してしまいました。

使ってみたら、結果はまたレポートすることにします。



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