カシュー塗装/擦りうるし風
(木鉢の補修、塗装)




更新 040605
初稿 030915


1. まえがき

私のお気に入りの木鉢は、最初に買った6800円のセット (木鉢+延し板+麺棒)に付いていたものです。タイ製で紛れもない安物ですが、鉢の縁が低くて100〜200グラム程度を打つのがとても楽でした。

しかし2年ほど使ったら、塗装が剥がれしまい使えなくなりました。しょうがないので木鉢を買い換えましたが、大枚はたいたのに、なんと縁が高くて使いにくい。

そこで安物のほうの木鉢を補修したいと思っていました。実際一度チャレンジしたんですが、そのときは失敗しました。使った塗料のニオイが全然とれなかったのです。そこで今回はカシュー塗料を使って再挑戦。

補修の話ではありますが、カシュー塗料を使った擦りうるし風の塗装方法は応用も効くので、きっと参考にしていただけると思います。


2. 補修前の木鉢の状態

まず補修前の状態をご覧いただきましょう。



画像で白っぽいところが塗装が剥がれたところで、実は木地が完全に露出しています。露出した木地はザラザラ。この画像は一番目立つところですが、小さな傷は無数にできてしまいました。



これは側面の状態です。そもそも塗膜の強度が足りないんですね。

この塗装剥がれは、蕎麦打ちに直接大きな問題があるわけではありませんが、私は道具を毎回洗ってしまわなくてはならないため、水を吸うので衛生的によありません。そこで補修することにしたわけです。


3. 塗料について

前回失敗した塗装というのは、ポリウレタン系の塗料を使ったんですが、どうしても強いニオイが残ってしまいました。

今回はカシュー塗料というのを使うことにしました。カシューナッツから抽出したオイルを乾燥で硬化するように化学的に変成したもの「代用漆」とも呼ばれているものです。天然のものが原料なので比較的安全という触れ込みです。



これが塗料の缶です。直径5センチくらいの小さな缶で500円ですから、けっして安いものではないですが生漆にくらべれば安価で、かぶれの恐れもなく使いやすいものです。



カシュー塗料は、ホームセンターに行くといくつもの色が並んでいますが、今回選定したのは「透」という色です。「家具製作 鯛工房」のホームページの記述によれば、「透」が本来のカシュー樹脂で、他の色はアルキド樹脂などとの混合物だそうです。


4. 下地処理



補修は布ヤスリで古い塗料をはがし、さらに表面を整えます。

最初に40番を電動サンダーに取り付けて荒削りして古い塗料を落とし、その後80-120-240-400番の空研ぎペーパーで順次仕上げて行きました。最後にウエスを軽く湿らせて削りカスを除去して準備完了です。


5. 下塗り

擦りうるしは、漆を塗っては拭き取ることを繰り返して塗装します。カシューでもそれは同様です。



最初はまずやや濃いめの塗料を作ります。カシュー塗料を缶の1/3ほど取り出し、原液に対してカシュー薄め液を30%ほど入れて粘度を下げます。



塗料が薄まったら、刷毛を使って、ざっと全面に塗ってしまいます。これで木目にある細かい穴にカシュー塗料が詰まります。また表面にも塗料がしみこみます。このまま数分置きます。

一方、ここまで塗装が終わったら、塗料にカシュー薄め液をさらに30%ほど追加して、原液と薄め液が一対一程度になるまで薄めます。



液が薄まったら、まず刷毛で10平方センチ程度の面積に塗ります。表面の塗料が緩みますので、すかさず布で拭き取ります。すると木地の表面に薄い塗膜を残して、大半の塗料が布に移ります。布はガーゼ地が使いやすいです。

一通り拭き取ったら、そのまま塗っては拭き取り、塗っては拭き取りと、表面全体を3回程度なめます。そのうちガーゼ地に塗料がしみこみ、刷毛で塗っているのかガーゼで塗っているのかわからなくなってきたら作業をやめます。



これで一日目の工程は終わりです。だいぶ擦りうるし風になってきました。

ここで注意点があります。この最初の塗装直後は直射日光に当ててはいけないということです。細かい木目の中に入った塗料が、膨張した空気に押し出されて塗装ムラになるからです。


6. 仕上げ用タンポを作る

下塗りは広範囲の面積から結構大量の塗料を吸い取るので、吸い取り用の布はタオル程度の面積のガーゼ地を畳んだものがいいのですが、次の仕上げ塗装はそれほど塗料を使いませんので、作業性のよいタンポを作ります。



まずウエスを1センチ程度の厚みに巻きます。



これを木片 (5×10センチ程度)にかぶせてワゴムで止めます。木片の厚みは1センチ程度がいいようですが、今回は5ミリ程度の厚みだったので、別のウェスを木片に巻いて厚みを稼いであります。


7. 仕上げ塗り

下塗りから一日経ったところで、塗装ムラを400番の布ヤスリで削り取っておきます。今回は側面部分が全体的に荒れていたので、念入りに下削りをしてあります。



仕上げ塗りの塗料の濃さは、塗料と薄め液一対一としました。刷毛で側面に塗料を塗ります。側面が白っぽいのは、下削りのあとです。



塗料を塗ったら、ただちにタンポで拭き取ります。



側面が終わったら底面も同様に行います。

この作業を、側面 (上端の縁を含む)、底面、側面、底面…と、全部の面を三回程度繰り返します。するとタンポが塗料を吸って、下塗りの時と同様に刷毛とタンポのどっちで塗料を塗っているかわからない感じになってきます。さらに続けて、刷毛で塗料を足しながら仕上げはタンポでやる感じにになり、塗膜がしっとりとしてきたら終了です。



終了後タンポはこんな感じになります。



8. 塗装完了



塗装終了です。どうですか。ホンモノの擦りうるしみたいでしょう。現物を見ても、やはり擦りうるしそっくりです。ネット上には「カシュー塗料は漆と見分けが付かない」という記載もありましたが、なるほどねえ、という感じ。


9. ムラについて

画像をよく見ると、濃いところと薄いところ、つまりムラがあります。これはあまり密でない部分の木の繊維が塗料を余分に吸って暗く見えているからです。



たとえばこの部分は、冒頭の画像で塗装が剥がれて白くなっていた部分です。もともと木の繊維が荒れている箇所ですが、擦りうるし技法の塗装ではこういう木地が粗の部分には塗料がたっぷりしみこ見ますので、このように黒くなるのです。実際、実物は黒光りしています。


10. 乾燥

カシュー塗料は乾燥に24時間程度かかるといいますが、塗装翌日が非常に好天だったので、早朝から丸一日、直射日光を当てて乾燥させました。かなり高温になり、最初は庭がシンナー臭くなっていましたが、夕方には近くに鼻を寄せてやっと分かる程度になりました。じき抜けてしまうでしょう。


11. まとめ

というわけで、簡単できれいな塗装ができる擦り漆技法をご紹介しました。カシュー塗料はホームセンターにありますし、塗りかたも非常に簡単ですので、機会がありましたらお試しください。



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