ケトルでダシをとる




更新040703
初稿 030227


1. 素人のダシとりの問題点

素人がダシをとる場合、本職と一番違うのが、蒸発量と温度の関係です。

本職は30リットル近いダシを一度にとりますが、この場合直径34センチ、液高さ33センチ程度の寸胴を使います。

一方素人は1〜2リットルしかだしをとりません。したがって体積が小さいわけです。

この場合、鍋の形状が相似であるとすると (つまり素人が寸胴のような形状の鍋を使ったとして)、体積が1/30の場合、直径や高さはその三乗根の 1/3.1 。面積はその二乗で 1/9.6 となります。したがって、単位体積当たりの表面積が約3倍となり、一言でいえば冷めやすいわけです。

特に問題は上面の液面で、通常の家庭用の鍋のように液面の直径が液の深さより何倍もある条件では、強い冷却をしながら加熱をしていることになります。

その結果どうなるかというと、まず鍋蓋を使わないで煮詰め率 (蒸発量)をプロと同じにしようとすると、火力を下げざるを得ず、温度が上がりません。実験では鍋にもよりますが、90〜93度程度。ちょっと低いかな。

では鍋蓋をするとどうなるか。温度は上がりますがアクがとりにくくてなんとも不便です。また鍋蓋は少しスキマを空けないと温度が上がりすぎますが、スキマの大小で煮詰め率が変わりコントロールも難しい、といった欠点があります。

鍋蓋をしないで温度を高くしたい場合は、火力を上げることになりますので (中火以上)蒸発量が多くなります。なので最初の水量を増やしておくことになりますが、この場合は、節の風味のなにがしかを失うと見てよいでしょう。蒸発が活発すぎるからです。

2. ケトルは素人を救う

ではどうしたらよいか。

まず側面と上面を考えてみますが、側面の放熱はひとまず小さいとみなしましょう。上面の熱放散のほうが深刻だからです。

まず鍋の形状ですが、通常の家庭用の鍋のような平形状ではなくて、寸胴形状ほうが液面が小さくていいはずです。でも全く同じ形状ではまだ放熱が大きいはずです。1/3に絞らねば同じにならない。

落としぶたというアイデアもありましたが、残念ながら匂いの問題があるのと、アクもとりにくいという状況。

そんなことを考えながらデパートを徘徊したら、ぱっと閃きました。ホーロー引きのケトルです。上方を絞った形状。とりわけ蓋の部分が絞ってあるので上面の熱放散が少なそうです。

早速1.5リットル容積のものを買い求めて (ダイエーで2400円くらいでした) 実験の結果、我が家の最もカロリーの小さいバーナーを中火にすることで、10分あたり0.1リットルの蒸発量になり、なおかつ温度が97.5度に維持できることがわかりました。これはよさそうです。

3. ケトルによるだしとりの実際

では実際の様子です。



ケトルに1.5リットルの湯を沸かし、細かく砕いた節を投入します。節はマルサヤの本枯れ節 (古川製粉さんで買えます)。火力は小型バーナー (たしか1000キロカロリー)の中火。この火力は終始変えていません。



最初のアクとりです。枯れ節は本来アクは非常にすくなくて、これも「アワ」みたいなもんですね。



しばらくすると泡立ってきます。その頂点にアクが浮くので、これをオタマでカットするように除去します。これも一回だけ、あるいは一度もやらなくて済むこともあります。もちろんアクのでない節ほど良い節です。



5分ほどしたらケトルをオフセットして、ガス火を片方に寄せます。これは内部に一方向の対流を作りたいからです。



その後ケトルのなかを軽く攪拌してやると、泡がおさまり液面が見えてきます。泡が一旦切れると外気が入るようになるので、火力を上げない限り泡で口が埋まることは、もはやありません。

また火力を片寄せてあるので画像の右から湯が沸き上がり左に沈んで行きます。左端にアクがたまるのが見えた場合は、ときどきスプーンで除去してあげます。

この状態は非常に安定していて、ときどき節をかき混ぜながら、このまま50分煮詰めました。



温度です。97.5度になっています。素人の場合、この温度を維持するのがなかなか難しいんですね。いい感じです。ケトル。



50分経過したところでダシを節から分けます。ケトルの注ぎ口の根元は小穴を集めたようになっていて節が出てこないので、この作業は非常に簡単です。



ケトルからカップに出したあと、念のためもう一度濾します。

☆ほとんどダシガラがないので、この出し濾しは、コラム編 c-26お茶パックだし濾し法でも上手く行きます。




濃厚で芳醇な香りのするダシがとれました。最終的には節の9倍まで煮詰まりました。15倍スタートなので、40%の煮詰め率ですね。素人がここまで煮詰めると、濁ったりおいしくなかったりするんですが、まず透明度は合格。早速つゆにしてみました。

結果は。おいしー。本当に美味しい。久しぶりにたくさんたくさん蕎麦を食べてしまいました。


なお、ダシガラをケトルに戻して二番だしをとりました。一番だしで作ったつゆをベースに醤油を加えて甘みを抑え、これを二番だしで延ばしてそうめんのつゆを作ってみましたが、これまた凄く美味しい。

というわけで、このケトル法。現在かないまる邸では、本枯れ節を使うときのダシとりの標準となっています。


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