これは以前コラムにあったコンテンツです。

柚子そば・茶そば・生一本
(御膳粉の生粉打ち)





改定 020119
初稿 011224


御膳粉というのは、そばの実の中心部分を製粉した真っ白なそば粉です。これを生一本、または生粉打ちで変わりそばにする方法をご紹介しましょう。御膳粉の生粉打ちは難しく珍しいそうですが、なに、ポイントをつかめば素人でも打てますのでご紹介しましょう。

まず言葉の意味ですが、生一本とは御膳粉を生粉打ちにすることをいいます。江戸時代はそば職人の腕の証といわれたようです。御膳粉にはタンパク質が全くといってよいほど含まれないので、手法は当然「湯練り」となりますが、ここで紹介するのは、加水のほぼ全量を熱湯で行う全湯練りです。もちろん麺をつなぐ御本尊はタンパク質ではなくて、熱湯でアルファ化された澱粉、つまり「糊」です。

生一本でも難しいのに、さらに変わり種を入れてつなぎを入れないのが、御膳粉の生粉打ちの変わりそばです。いずれもそば屋ではまず食べられないと思いますので、以下にその作り方を紹介します。



1.材料

・御膳粉
まず御膳粉を人数分用意します。一人前100グラム×人数でいいでしょう。一応高山製粉のを使ってください。もちろん他の製粉メーカのものでもかまいませんが、加水量は保証の限りではありません。なお素人が練習用に打ちやすいのは200〜300グラム程度です。

・変わり種
生一本の場合、不要
抹茶の場合、一人前0.5グラム程度
柚子の場合は、一人前1/2〜1個程度。
  なおゆずの量は、大ゆずの場合1/2個、子ゆずで1個程度ですが、好みや削りかたにもよりますので、何度か打って加減してください

・熱湯
ヤカンか手鍋にたっぷり沸かしておきます。熱湯は加水直前に計量します。

・道具
通常のこね鉢のほかに、ヤカン、耐熱計量カップ、菜箸が必要です。

2.打ちかた

2.1.準備

抹茶は、そば粉重量の1%程度の少量の水で溶いておきます。ブツブツがなくなるまでよく練ってください。緩めの練り歯磨きのような感じにします。

柚子は目の細かいおろし金で皮をおろします。ていねいにおろしてください。ほんの少量の水でおろし金から落としたあと濾し布の上に乗せます。柚子の部分をひねって照る照る坊主の首のようにしながら絞り、さらに強くひねって柚子液を絞ります。濾し布が柚子液を吸ってしまうともったいないので、なるべく布の小さい面積で処理してください。

次にそば粉(御膳粉)を計量し、その70%をこね鉢に入れ、30%を別にしておきます。

こね鉢の御膳粉は概ね平らにしておき、中央が軽いくぼみになるようにしておけばいいでしょう。くぼみの底にもそば粉を残し、こね鉢が露出しないようにします。

2.2.熱湯の計量

目盛りのある耐熱計量カップを使うか、電子ばかりの上に小さめの耐熱のポリ容器か耐熱ガラス容器を置きます(以下計量カップとします)。金属カップは熱湯が冷め易いのでお勧めしません。

次にヤカンから熱湯を計量カップ八分目まで入れます。これは容器の温度を上げるためで、約20〜30秒待ってから捨てます。これをもう一度行い容器の温度を十分に上げ、熱湯を捨てます。

三回目が本番。もう一度、グラグラに沸騰した熱湯を、今度はグラム計量しながら容器に入れます。熱湯の量は、御膳粉の重さの60%(注1)です。カップに熱湯をいれすぎた場合は、それを捨てて、もう一度ゼロから計量し直します。

2.3.熱湯加水

計量できたら、熱湯が冷めないように手早くこね鉢の上に運び、御膳粉の上にまんべんなく廻し入れます。できる限り広い面積にまき広げてください。

熱湯が入ったら、ただちに別にしてあった残りの御膳粉を、熱湯の上に振りかけて、熱湯に蓋をします。

蓋をしたら菜箸でそばの山を崩し、攪拌します。湯練りはこの攪拌が最初の勝負で、温度が下がらないうちになるべく多くのそば粉に熱湯を触れさせるのが成功の秘訣です。

2.4.熱湯分散処理

菜箸で攪拌するとそば粉の温度がすぐに下がりますので、両手を使って回りの乾いた粉を左右から中央に寄せてゆき、こね鉢の中央に前後に長い山を作り、続いてこの山を手ですくい、揉み合わせて崩してゆきます。

やや熱いですが、ここが勝負。粉の乾いた部分と湿った部分をまんべんなくこすり合わせて、全体を湿りけのあるおから状にします。

2.5.変わり種の投入

熱湯投入後、約30秒分散処理をしたら、まだ熱いうちに変わり種を加えます。抹茶はペーストをそば粉に落としてからそば粉をまぶして手もみして広げます。容器に残ったものは、そば粉を容器にいれて掻き落とします。ゆず汁は適当にまいてください。変わり種が入ったらさらに分散を続けます。

なお、水練りと違って湯練りの分散処理は強くこすり合わせて大丈夫です。湯練りは熱により水と澱粉を合体させアルファ化する作業であるという原理を理解し、とにかく熱気と水気をなるべく多くの御膳粉に触れさせます。つまりまだ熱のあるダマと乾いた粉を引き続きひたすらこすり合わせてゆきます。

なお変わり種はこの時点では完全には分散しませんが、最後の練りで均一になりますから大丈夫です。

2.6.くくり

熱湯投入から約1分半経過したら、手のひらを下にして、力をいれて粉をこね鉢にこすりつけながら伸すような作業に入ります。60%の熱湯は御膳粉を玉にできる水分量なので、この作業で粘りが出てまとまり始めるはずです。

しかしもたもたしていて水分が蒸発してしまった場合は粘りが出ないので、粉重量の10%の範囲で追加加水しながらくくってゆきます。追加加水も水ではなくお湯を使います。

さて、水練りと違うのは、くくり加水の打ち切りかたです。水練りの場合は、ゴロゴロと転がし自然にまとまるのを待つ感じでした。ところが湯練りと水練りは全く様子が違い、最後の練りでかなり緩む性質があります。そのため自然にまとまるまでくくり加水を続けると緩みすぎて失敗します。

そこでまず追加加水しないで粉をひとつかみギューっと握ってみます。餃子のようになった固まりを指でつまんで、ボロボロっと三つ以上に崩れたらさらに加水不足。追加加水を実施します。餃子に力をいれるとヌっと変形して、さらに力を入れるとパクッと二つに割れるようになら適正です。

加水が終了したら、まだバラつく粉をギュギュっと無理やりまとめ、一個のボールにして、本練りに入ります。

2.7.本練り

加水の終わったそば粉は最初は若干パサパサしていますが、練っているうちに次第にしっとりしてきます。分散加水時点で乾いたそば粉のなかに隠れている糊が、練りにより均一化してくるからです。

またタンパク質でつなぐ水練りの生粉打ちと違い、力をいれてギューッと変形させてダイナミックに練ります。すると生地が緩んで粘りが出てくると思います。

全体にしっとりしてきたら菊ねりして空気を追い出しますが、水練りと違って、この段階もこね鉢の表面にこすりつけて念入りに練ってください。次第次第に柔らかくなり、もう柔らかくならないというところが打ち切り点です。100回以上練ることになると思います。最後にへそだししてつぶして玉にします。

2.8.のし

湯練りした玉は、温かいうちは澱粉がアルファー化していますので、温かい飯粒をのばすようなもので非常によく延びます。しかしタンパク質がまったくないので引きには脆弱です。のばせばかなり延びますが、引っ張るとあっさり切れますので慎重にやってください。

まずうち粉はたっぷり打ってください。生地が結構うち粉を抱えますので、うち粉が少ないとあっと言う間にのし板にくっつきます。

巻きのしも有効です。ただし、これもうち粉をふんだんに打たないとくっつきます。麺棒にまいてのばしているときにくっついたらアウトですから気をつけてください。

角出しはやめたほうがいいでしょう。角だしは剪断力が働くので厳しいです。私は最初に玉を四角く成形してから延ばし始めて、ひたすら縦横方向に延ばして四角いまま大きくしています(秘儀・四角玉のばし参照)。

2.9.たたみ

たたみは、これまた切れやすいので慎重にしてください。麺棒にのせて畳むときに生地を落とすと、再起不能です。私はこれで数回失敗しています。というかここでの失敗が一番多いです。

2.10.切り

切りは普通でいいのですが、自信がなかったらやや太めにします。切った麺は生舟ではなくて、平らな板の上に並べて、一回の茹で分量ごとに鍋にハラハラと落とせるようにしておきます。どうせすぐに茹でるので、ポリ容器に入れる必要はありません。

2.11.茹でる

変わりそばの生粉打ちは、なるべく打ちたてをすぐに茹でてください。時間が経つとベータ澱粉になりますので切れてしまいます(正確には割れている)。

また茹で時間が極端に短くなります。理由はすでにそば粉の大半がアルファ化しているからで、標準の太さで8秒。太麺でも10秒です。鍋にたっぷり湯を沸かし、サラッと投入してさっと上げます。麺を締めることも大切で、冬場でも氷水を用意したほうがいいと思います。

1.12.食べる

つゆは普通のものでおいしくいただけます。生一本は自分の香りをほとんど持たず、歯触り、のど越しが特有で不思議な食感です。口に含んでよく噛むと、やっと甘さを感じる以外はほとんどつゆの香りしかしません。したがってごく上品なつゆでもそばに負けないので、更級そば用のかえしを使いましょう。

茶そばは使った抹茶次第ですが、抹茶の甘味とうま味が楽しめます。茶そばは普通のそばといっしょに出して、交互に食べても大丈夫です。

お勧めは柚子そばです。これはうまいですよ。普通のそばと柚子そばを両方食べるときは、まず普通のそばから食べてください。柚子そばの味は強いので、逆にすると普通のそばが負けてしまいますから、いっしょに出してはだめです。

また、柚子そばの蕎麦湯はぜひ召し上がってください。これはそば粉を加えず(加えるとしても御膳粉にかぎります)、茹で湯だけでびっくりするほどおいしいです。ポン酢だしのような感じなんですが、非常に品がよくて、何杯でもいただきたくなります。

なおパソコン通信仲間から教わったんですが、柚子そばの場合、大根おろしの絞り汁でかえしを割ったつゆがまたオツです。お試しください。

(注1)
この60%という湯量は少し多いかもしれません。現在どこまで減らせるか勉強中です。とりあえず60%で麺になりますが…。



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