青ニ鋼、尺二の包丁


更新 020130
初稿 020112


道具編で扱った包丁はモリブデン鋼を使った刃渡り33センチ(尺一)のもので、どなたにでもお勧めできるもので、入門用そば包丁の名作と断言できます。私は最近までこの包丁を使っていて、そば打ち編の画像もこの包丁を使って撮影しています。

しかし現在はこの包丁を卒業して、青ニ鋼という鋼(はがね)製で刃渡り36センチ(尺二)の包丁を使っています。道具道楽モードに入っちゃったかな…(^^;)。高額商品ですが非常に使い易い包丁で、その価値は素人にもよくわかります。ただまあ、どなたにもお勧めできるというものではないので、道具編ではなく、こちらのコラムに書くことにしました。




この包丁、上の画像のように、形はモリブデン鋼のものとほぼ同じで、柄がドロップ形状になっています。しかし、刃の高さが高く、柄の角度も前のめりになっています。
尺二の包丁がすべてこの格好というわけではなく、むしろ直柄のもののほうが多いようですが、合羽橋のつば屋さんの店頭で手にとって選んだら、気に入ったのがこの形状だったということです。5〜6丁さわってみましたが、手にしっくりきて、そばを切る方向に振って一番ずれないで平行移動する感じのがこれでした。

材質は青二鋼というものです。尺一がステンレス系のモリブデン鋼を使った入門用であるのにたいして、こちらは鋼(はがね)です。炭素鋼にクロムとタングステンを添加したというもので、炭素鋼としては最高級の高度を持つ素材だそうです。

青二鋼は「鉄」ですからモリブデン鋼よりはさびやすいそうです。つば屋さんはさび落としをサービスでつけてくれました。でも週に2〜3回使いますし、食用油を薄く塗ってあるので、全くさびる気配はありません。

この油の塗り方ですが、塗るといっても、脱脂綿にサラダ油を含ませて、ごく薄く塗布したあと、ティッシュペーパーで完全に拭き取るというやり方です。刃の表面に拭き取れずに残っている、という感じ。

一度この処理をすると、鉄と油が結びつくのか、10日程度はそばを切ったあとは水をかけるだけでそば粉が流れ落ちてくれます。そのあと乾いたフキンで水分をぬぐえば水滴はいなくなります。研ぎのよい包丁はさびないとどこかで読んだことがありますが、これは水滴の切れがいいからだと納得しました。私は週に2〜3回そばを打ちますので、5〜6回水をかけたら油を塗るという感じでしょうか。刃先の油は極微量なので、そばの味が変わるということはないようです。

さて、尺二は36センチですが、こんなに長い包丁にした理由は、長いそばを打ちたかったからです。生粉打ちは生地をたたんだところで生地が切れるのが普通です。特に素人は四重程度にたたんで終わりですから、生地の端は曲率が大きく、まず確実に折れてしまいます。ですから、麺の長さは生地をたたんだ幅で制限され、したがって、広くたたみ、なおかつそれを切れる包丁の刃渡りで麺長が決まります。

実はつば屋さんの話では、本職はあまりこういう包丁を使わないそうですが、一回に打つ量が多く、またつなぎの入った生地はたたんでも折れませんから、こういう長尺な包丁は必要ないということでしょう。



さて、この画像は尺二で打てる限界で、麺長は34センチを超えています。もちろん普段からこんなに長くしているわけではないですが、それでもたいがいは30〜32センチに打っています。尺一でも30センチにはしてきましたが、30センチが安心して打てますし、さらに長めにもできるってところがありがたいわけです。

ところが、この包丁の良さは長さだけではありません。切れ味に真骨頂があります。刃が生地に触れたあと、すっと生地の中に吸い込まれるような切れ味があり、これが包丁さばきを楽にしてくれます。もしみなさんが長くそば打ちとつきあうのなら、尺一またはそれ以下でもいいですから、青ニ鋼の包丁を選ぶのは、よい選択かもしれません。



この画像は細めにそばを切った様子ですが、麺の太さが1.1ミリ前後になっていることがわかると思います(太く見えるところは、そばの断面、つまり生地の厚み方向が見えているものです)。切りながらかぞえたところでは、きりべら26くらいになっています。この程度は青二鋼では気持ちよく打てます。モリブデン鋼でももちろん可能ですが、モリブデン鋼は生地に入ったあと刃が左右に逃げる感じが少しあり、安心感というか、そばを切る喜びが違うんですね。それだけ刃先が鋭いんです(モリブデン鋼でもきりべら23程度まではなんの心配もありません)。



これは白樺をそうめんのように細く切ったものです。



端面のアップですが、断面が長方形になっているのがわかりますか。一見切り幅に見える広いほうの幅は、実は生地の厚みです。薄いほうが切り幅で、平均0.9ミリ。きりべらでいうと33になります。

この切り幅はもはや青ニ鋼の包丁ならではの領域。さっと茹でてしっかり冷水で締めると、清涼感のある素敵なそばになります。たくさん食べるものではなく、50グラムくらいを酔い醒ましに作って食べる、仕上げそばの逸品です。


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