生粉打ちは「練り」が効かない





更新 021231
初稿 011222


「加水は一気がよい」の話にからみますが、「生粉打ちの水練りは練りが効かない」という話を書きます。

そば粉に含まれるタンパク質の粘性は極めて強いとコラム3番に書きましたが、初心者はそば粉が手にくっつくと、その粘りが強烈で、こすって落とすことが難しいのを経験していると思います。これは粘性が強いことともさることながら、これを練りによって展延させ均一化させることが非常に難しいことを教えています。

つまり一度失敗した玉は、練りによって粘性を復活させることは不可能です。つまり「生粉打ちには練りはないのです」。じゃあ、菊ねりってなんなんでしょう。

それは空気を追い出してタンパク質同士をくっつける作業であり、二八やうどんの練りとは意味が違うのです。

このwebの生粉打ちの手順を思い出してください。まず分散加水後のそば粉はパン粉状ですが、ここでは澱粉とタンパク質がカオス状態で水分をシェアしています。タンパク質が偏在しないのは、ここまで一気に加水するからです。

そのあとのくくり加水はパン粉に、とりわけその表面に水分を与え、表面のタンバク質に粘性を与えパン粉同士をくっつける作業です。つまりパン粉状のそば粉がくっついたのが玉なのです。

最後の菊ねりは、パン粉同士のスキマを潰し、気泡を追い出して生地を一続きにする作業です。したがって、水分が均一化するまでは粘性があがります。このとき生地にはテリででて、表面がしっとりします。

しかしそれがピークで、そのまま練り続けると逆にそば玉が割れて来ます。この、調子が良かった生地が練りすぎにより割れて来る状態を「そばが風邪をひいた」といいます。一般に生地のいじり過ぎによる割れは乾燥説が有力です。しかし、乾燥なら再度加水すれば調子が戻るはずですが、実際はそうはなりません。練りすぎた玉ではタンパク質同士の偏在が始まり、連続性が崩れるというメカニズムが裏にあると思われます。

本によっては「水廻しは練りの一工程である」と言うような主旨のことが書いてあります。水廻しが終了した時点で基本的には練りが不要なようになっていなければいけないという意味で、これはまことに的を射た表現です。しかし、そもそも「練り工程はない」という意味ではハズレているともいえます。

つまり、菊ねりは練りではないのです。菊ねりは生地への加圧を意識することが極意です。加圧しながら生地の外側をゆっくりと内側(中心のへそ)に送り込みますが、これはそば玉のいろいろな場所を加圧するためで、決して練りたいのではないのです。

へそだしも、菊ねりでできたへそを周辺から加圧して一続きの生地にくっつけるだけの作業です。

二八やうどんの「練り」は、生地への加圧も大切ですが、生地をダイナミックに変形させることも重要です。変形によりグルテンに編み目構造を作る必要があるからです。

また湯練りは澱粉をアルファ化して糊(のり)にしてあるので、練ることで糊が均一化してつながりがよくなります。練り始めは多少硬くても練るにつれ玉が緩くなります。これは湯練りが流動性のあるアルファ化澱粉でつながれて行くからです。最初固めにまとめて、ひたすら練る。これが湯練りのコツだったりします。

しかし生粉打ちの生地は積極的に変形はさせてはいけません。タンパク質のつながりが切れて、澱粉がむき出しになるからです。一度澱粉がむき出しになると、そこはもうつながらない、そう思って対処すべきです。

このように、他の打ちかたにくらべて生粉打ちの水練りは練りが効かない特殊な打ちかたなので、二八や湯練りで練習しても生粉打ちの水練りができるようにはなりません。全層粉はなんとか打てても、おいしい白樺や手ごわい胡桃亭はつながりません。

「練りは効かないのだ」。生粉打ちの水練りを志す場合、これは肝に銘じておくべきです。



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