なぜ厚削りを40〜50分も煮出すのか




更新 040703
初稿 011221


そばつゆのだしは厚削りの本枯れ節でとるのが最高です。良質の厚削り節の厚みは0.8ミリ前後。それを40〜50分も煮込みます。なぜでしょう。

一つは蕎麦つゆというのは、非常に濃厚なダシが必要なことに由来します。濃厚なダシが必要な理由は、コラム編c-13 ダシの濃さについて をご覧ください。もちろん薄削り節でも濃厚なダシはとれますが、削り節がスポンジのようにダシを吸ってしまうので、10%近くだしを持って行かれます。

もちろん二番だしを必ずとるのならこの持っていかれたダシはほぼ回収でき、種物のダシに使えますが、関東のそば屋さんは盛り蕎麦が中心なので、そうもいかないのでしょう。圧搾機でも使ってダシガラを絞るな回収できるでしょうがそれだとダシが濁ってしまいます。

もう一つは香りの問題です。40〜50分も煮詰めて香りが飛ぶじゃあないかと思うでしょう。それは鰹節のしなやかな香りをよしとしているからそう思うのだと思います。しかしこの香りは、強すぎるとそばの風味を邪魔します。一方で厚削り節を長時間煮詰めると荒い香りは飛び、甘香ばしいやわらかい香りだけがのこります。

特に本枯れ節 (かび付けした香りの少ない節) を使った場合の香りはもともととても穏やかで、これで作るつゆは本当に穏やかなもとなります。これが関東の老舗のダシの基本となっているそうです。

もう一つ見逃せないのが、節のうま味の化学変化です。40分以上煮出しただしはかなり濃厚な感じがしますが、これは単に節の割合が水に対して大きい (つまり煮詰まって濃くなった)ということではないようです。成分が熱化学変化を受けて味が変るようなのです。

たとえば、うす削りの節は数分でだしがとれますが、そのままでは蕎麦つゆ用のダシとしてはイマイチです。甘味材をみりん中心とするなど、旨みを強くする工夫が要ります。ところが、とれただしを30分以上煮詰めると、単に煮詰まって濃くなったのとは別の、厚削りのだしと同じような味わいが加って来るのを感じます。

これはダシだけで起こる変化ですが、厚削りの場合、加熱により肉部そのものにも化学変化がおこり、新たなうま味が生み出されるようにも思われます。

以上のように、厚削りを長時間煮出す方法は、

の三つの要因から、蕎麦つゆ用としてとても合理的といえるのです。


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