胡桃亭そば粉(2)



初稿020512
更新020810


では打ってみた感じです。

まず加水方法ですが、「蕎麦打ち編」と同じでOKでした。一応復習しておくと、最初が全加水率の80%を一気にくわえて「分散加水」。残り20%を3回に分けて「くくり加水」です。

大切なのは、分散加水を短時間でやること。よく「加水はていねいに」と書かれていますが、誤解しやすい表現です。ていねいに、しかしなるべく短時間で水を回す。これが生粉打ちのコツです。

で、胡桃亭さんのそば粉ですが、一度150グラムでそば粉と対話しながら打って、加水率は約58%でした。そこで100グラムのそば粉に対して、全加水量58グラムを用意して写真を撮影してみました。手早く打つために水も二つに分けておきます。つまり、

・分散加水 …45グラム
・くくり加水…13グラム(7グラム、4グラム、2グラムに分けて加水)

です。



まずこれが、45グラムの分散加水が終わったところです。水は一気に投入して、2分以下で分散させています。砂のようなそば粉からよい香りが立ち上り、また想像していたより強いねばりがありました。この粘りは今回一番意外だった点です。



くくり加水の一回目(7グラム)を行ったあとです。粉が集まりはじめました。



二回目のくくり加水(4グラム)を行ったところです。そば粉がさらに集まってきました。



最終のくくり加水は残り2グラムの予定ですが、少しまとまらない部分が残ったので、数滴の加水を追加しました。追加分は1グラム弱だと思います。したがって今回の加水率は「59%弱だった」としておきます。



100回練って気泡を追い出し、へそだしをして、つぶして玉にしたところです。玉のなかに甘皮がたくさん見えます。

この練りの際に、いままでに無い経験をしました。それは、そば粉が集まるに任せてまとまった時点では、その玉はややゆるい、ずる玉状態になっていました。おやおや、これは緩かったかなと思い、練っていると、適度な硬さになりました。これはそばの粒度が粗いため、時間がたつとそば粉が水を吸うからだと思われます。



さて、延しですが、100グラムと少量なので秘儀・四角玉のばしで延ばすことにします。まず、丸を四角にします。

四角にするときは、四隅から手で押しよせて、上から押してつぶすという作業をしますが、この作業中にもう一つ面白い経験をしました。

それは、玉を押した手をどけた瞬間、玉の表面にキラっと光る水滴が見えることです。玉の内部の水がしみ出しているようです。それも一瞬見えてすぐに消えます。

細挽きのそば粉では適度なテリは出ますが、水滴が光るという経験はありません。胡桃亭の超粗挽きは、玉の内部がスポンジ状になり、そこに水が支えられている状態になっているのでしょう。

なおこの現象が見えたのは少しの間で、延し板や打粉を出して、延し工程の支度をしているうちに見えなくなりました。そば粉の粒子がさらに水を吸い込んで、遊んでいる水分がなくなったということでしょう。



延ばし終わったところです。32センチ×20センチ程度になっています。

この延し工程にはものすごく力が必要でした。すごく硬いんです。しかし生地の延びそのものは比較的よく、生地が大きく割れることはありませんでした。そば粉を打つ量が100グラムと少ないこともあるでしょうね。一応なんとかなってます。



たたみました。左から一度たたんで、もう一度右からたたみます。長さが32センチ。これが麺の長さになります。



こま板をかけて切りました。麺長は生地の長さですから、30〜32センチです。

で、切るときの感触がまたスゴイものでした。

普通のそば粉で作った生地は、現在使っている青二鋼の尺二の庖丁だと、まっすぐ落としてもスッという感じで歯が入ります。

しかし胡桃亭のそば粉は、縦にまっすぐ庖丁を入れたのでは庖丁が重くて素直に入りません。無理して押しても生地をつぶしてしまいます。そこで斜め向こう方向に押し切るような感じにして切りました。ちょうどゴボウを削ぐ感じですね(^^;)

切っているときの音もスゴイ。「ダダダトン」という感触が手にきます。音もします。「ダ」は生地の境界で次の生地に当たる音なんでしょう。生地が4層なので、ダダダと3回音がするわけですね。最後のトンは下の板にぶつかる音。トンはともかく、ダは細挽きではまず経験しないものです。



切った麺のクローズアップです。画像の左半分は麺が倒れていて、庖丁で切った面が見えています。どうです、このツブツブ。これはそばの実が庖丁で切られた断面なんですね。

右半分はのし面で、白いのは打粉です。慣れてないので打粉が多めですが(最近は慣れてきたのでもっと少なめです)、これも凸凹感がありますね。

切り幅はきりべら18くらいになっていますが、硬い生地を押し切るため力が入るので、切り幅のピッチが安定していませんね。修行が足らないんです(^^;)

きり上がった麺は少し太麺で、これ以上細く切ることも可能ですが、細くしても胡桃亭の良さが活かせないようであまり美味しくありませんでした。



茹で上がりました。100グラムを5リットルの沸騰した熱湯で約30秒。水で二回洗って氷水で冷やして盛りつけています。




一応つながったという証拠写真です(^^;)。麺の長さを割り箸とくらべたものですが、30センチ強あります。庖丁幅いっぱいですね。



麺のクローズアップです。この画像からわかるとおり、この蕎麦は「星が入っている」なんてもんではありません。そば飯を横に並べてつなげたようなもんです。これが後述の食感にモロに効いてきます。

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さて、食べてみました。

うまい!!。

驚きました。まずつゆをつけないで食べてみましたが、ホントウに美味しい。

そばの実を完全に粉にせず組織が残っているので弾力というか歯触りが普通のそばとは全く違います。そばのツブをかみ砕くときの感触と、その瞬間に広がる香りと味、まさに未体験ゾーンでした。細挽きそば粉の生粉打ちをツルツルと食べるのも捨てがたいですが、これは全く別の食べ物だと思いました。

次につゆをつけるとまた美味しい。麺の表面はまったくツルツルでありません。なので、ちょうどラーメンの縮れ麺のようにつゆがすごくよく絡みます。だから味が濃い。

最後に、切り板の上に残った生地の端部のくずと打粉をいっしょにして水溶きにして、沸騰したゆで湯で割ってそば湯をいただきました。これがまた美味しい。このそば粉、すごく甘みが強いんですね。そば湯もいままでと違うおいしい体験でした。


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