アップです。どうですこのしっかりした麺線。カドがきっちり立っていますが、これが牡丹種になってからの大きな特徴です。
石碾屋さんのお話では「平均粒度が大きくなり、外層タンパク質分が碾きこまれないで大きいまま残り、粉としては内層の澱粉質が構造を支配的に決めるので、茹でるときに角が溶けないため角が立つのではないか」とのこと。
そういえば御膳粉の生粉打ちは断面がカチっとした真四角ですね。たしかに、打粉が落ちるのは別として、麺線として練り込まれた澱粉は茹でによりあまり溶けませんね。水練りの生一本がかなり硬くなることがそれを証明していると思います。
というわけで、これは牡丹種の特徴というよりは、最近の石碾屋さんのそば粉の粒度分布に依存した特徴ということでしょう。
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さて、実は今回の「抜き」は、私の腕前不足で、真価を発揮するまでに数回の試行錯誤を要しました。最初の加水率は59%、ゆで時間は40秒弱でしたが、味は大変によいものの舌触りがザラザラしていて、ちょっとそれが気になりました。
そこで59%でつながろうとするのを少しこらえて、60%まで加水を増やしてみました。4段加水の最後の2回で、蕎麦がそんなに水を欲しがらずに集まろうとするところに、もうちょっと余分に水をくれてやる感じ。これで舌触りがぐっと良くなりました。味も濃くなり激変と言っていいでしょう。
やはり加水率1%の狂いは怖いということですが、とくに超粗挽きで舌触りに効く理由は、平均粒度が大粒寄りのため、粒が水を吸いきるのに時間がかかるということなんでしょう。水を吸い切っていないと、粒が生煮えになり舌触りを害する、そんな感じですかね。
加水率を上げると同時に、茹で時間も振ってみましたが、35秒が適正でした。
また一回に茹でる量をそば粉換算で100グラム以下に抑えて、なおかつステンレス多層鍋を十分加熱して、蕎麦を投入すると突沸するような状態にして高温を維持するとおいしくなりました。家庭ではこの条件を守るのはけっこうむずかしいところです。おそらく業務用の大きな鍋でゆでる場合は問題ないのでしょうね。家庭用の鍋では相当気をつかわないと、温度が下がってだめです。
なお、切ってから茹でるまでに多少時間を置いた方が確実にいいですね。これも水分が粗碾きのそば粉 (蕎麦ツブ?) にしみこんでゆく時間が必要なんでしょう。切ってすぐより30分放置してから茹でた方が、舌触り的にもヌメリ的にもぐっとおいしくなりました。
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では総合的な食感ですが、この新しい「抜き」、以前のものとの比較はともかく、まずとてもおいしい蕎麦だと思います。
なにしろ味が濃いですね。これだと本州産の玄蕎麦もうかうかしてられないかも。ヌメリ感、歯ごたえなど、蕎麦のうまさを本当によく備えていると思います。
キタワセ (+旧粒度分布) との比較では、以前打たせていただいた時との記憶によるものですが、味の濃さと舌触り、ヌメリ感は間違いなく牡丹でしょう。香りは自信がありませんが、もしかするとキタワセのほうが若干強いかもしれません。ただし牡丹ももちろん十分にそばの風味を持っていることはいうまでもありません。
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石碾屋さんの「抜き」。お店でも以前よりおいしくなっているそうです。ただ石碾屋さんは、「そうはいっても、蕎麦のうまさとお客さんの入りは関係ないみたいですね」とぼやいてました。近隣の方は (近隣でなくても)、みなさんぜひ食べに行ってください。場所は秋田県本荘市
(地図はこちら) です。
繰り返しになりますが、このそば粉は非売品です。このレポートを見て「私にもください」というメールを出さないようにしてくださいね。よろしくお願いします。