すばらしい音質。高信頼性。常用される評論家が続出
高音質DVD-Rディスク、
音匠

060922更新
060918初稿
1)きっかけ
「仙台にもかないまると同種の人間がいた」。これが、かないまるが光ディスク事業部の小林さんにあったときの印象です。
とにかく一面識も無いのに、いきなりメールで (それもかないまるのメールコーナーから)、「ディスクの音決めで意見が割れて困っている。聴いてほしい」ですからびっくりです。
断る理由は無いので、どうぞと返信したら、およそ200枚のディスクを持参してかないまるの試聴室に現れました。全部聴かせるつもりだったらしいです。恐ろしい(^^;)。
とにかく見せていただきましたが、赤、青、緑、黄色、色とりどりのディスクたち。まずは各色の音を聴かせていただきました。
まあ予想通り緑がいい。それはCDのヘリに緑マジックインキを塗ると音がいいということを散々やった経験から予想通りなんですが、それ以前にどの色もとにかく音がいい。
2) 国内ソニープレスのDVD-R
聴かせていただいたDVD-Rは、ソニーの茨城工場で作られりもの。この工場の本業はプレス品のDVDソフトの量産で、設備が空いているときにDVD-Rの生産もしているのだそうです。
実は、販売用のDVDソフトの設備でつくるというのが、まずいいんですね。DVDソフトのプレスは、ピットそのものをプレスしますので、成形精度は半端でなく高い。その設備をそのまま使って作られたDVD-Rは、プリグルーブの精度が高く、エラーレートなど測定上は台湾製と同じでも、音質には格段の差がつくわけです。
この点をもう少し詳しく見てみましょう。
3) 金型精度で音質は左右される
CDにしろ、DVDにしろ、プレス開始初期のものは音質がいいって知ってますか。一番音が良いのは、プルーフと言って、プレスの金型ができて最初にプレスされるものです。
目的はディスクがちゃんとできているかを調べるためで、光学特性(反射率、ピット形状、アイパターン、ジッタ特性など) を徹底的に調べます。つまり、その金型で量産してよいかどうかの判断をするのがプルーフ盤です。
実はかないまるも、デジタルシネマサウンドの宣伝用のDVDを作ったことがあるので、プルーフ盤を受けとった経験があります。そのとき思ったのは「いやー、音がいいなあ」です。CDのプルーフ盤も聴いたことがありますが、やはり音質抜群。CDもDVDも金型が新品でピットのキレが良く、光学的状態が非常によいからでしょう。
同様に量産も初期のものが音質がいいですね。プレス枚数の少ないDVDやSACDは2000枚とか3000枚のワンショットで終了してしまうことが多いので、ほとんど全部が同じ音 (もちろん高音質) なことが多いです。
ところが当たった歌謡曲やJポップは、ヒットしてから買うと音質が悪いことが多いと感じます。仕事で使っているモー娘のCD (仕事がら、ユーザさんが聴きそうなものは、できるかぎりチェックしてますので) に修復不能のキズがついてしまったので新品を買いなおしたらスゴク音が悪かったことがあります。そのときは中古のCDを買いなおしました。傷だらけのCDでしたが初期プレス特有のよい音質をゲットできました。かように金型の状態は音質にかかわる。したがって、プレスの金型の精度はモロに音質に影響力があるわけです。
実は、CD-RやDVD-Rは、焼き込み前はピットはありません。「焼き込み=ピット作り」ですからね。では最初はなにがあるかというと、プリグルーブというサーボをかけるための連続した山脈だけがあります。山脈は意図的にうねりをつけてあり、このうねりで回転数が決まります。DVD-R機はこの山をなぞるようにレンズを位置だししておいて、レーザ光線をあててピットを焼き込みます。ここで山のカドが多少甘かったり縒れたりしていても、DVD-R機のレンズは、大略その平均位置に位置決めされますので、ピット列そのものはきれいにできてしまいます。
とはいうものの、音は正直なもので、プリグルーブの金型精度は音にモロ効きます。
音匠DVD-Rは、まずこの金型の精度が、プリグルーブしかないDVD-Rだけ作れればいい台湾メディアなどと比べて一桁高いこと、他の国産品に比べてもトップクラスだそうですから、DVD-Rの音質をまずは約束してくれるということになります。
4)音匠の色
では音匠のグルーブ面 (レーベル面) をご覧ください。

昔CDの側面やセンターホールに緑のマジックインクを塗った経験のある方は、もうこの色を見てドキドキするでしょうね。緑は赤色レーザの補色で、赤色を吸収する能力に長けています。緑マジック技は、ディスク内に広がった乱反射を外周または内周の端面で吸収するワザです。
これに対して音匠は、ピット部を通過して上部面に達したその場で吸収してしまいます。正確には臨界角以下の成分が外に飛び出したところで吸収します。
もちろんピット面で乱反射したレーザ光は臨界角以上の角度のものもあり、それはディスク上面で全反射して内部に戻りますが、その反射光が照らすピットは、現在読み出し中のピットから離れていますし、何度も反射するうちには外に出てしまい、緑面で吸収されてしまいます。
DVDはディスクの真ん中にピット面があり、その上に0.6ミリの透明のポリカの層がありますが、その上にかけられる印刷インクに緑色をつけたのが音匠の音匠たる所以です。
では、緑のインクがないとどうなるでしょう。普通のDVD-Rは何らかの緑以外の塗装がかかっていますが、それが緑でない場合、印刷面で反射してディスク内に光が戻り、迷光となってサーボに悪影響を与えるのでしょう。当然音に影響します。
DVDの赤レーザは、実はレーベル面から完全に目視できるほど強いものです。これを簡単に見れてしまうようなDVDプレーヤーは安全規格を通りませんので、通常みなさんは見ることができませんが、かないまるは設計者なので、ディスク面に光る赤点をよくみかけます。なのでこれはかなり気になっているところ。音匠では赤色は見えないか。あ、そういえば確認してないですね。今度みてみよう…。
ちなみにかないまるの経験では、最も音が悪いのは実はプリンタブル白色DVD-Rです。なにしろ白ですからね。反射度抜群。音質劣化も抜群です。
5) 音匠の緑は特別製である
しかもこの緑。マジックインクとはちょっと別格です。色素の構成は企業秘密ですが、この色素の構成は耳で判定してチョイスされているのです。仙台の小林さんは、それを自力でやってのけたのです。
かないまるも「緑は緑でもいろいろある」という試聴をさせていただきましたが、商品に採用した緑は、他の緑と歴然と違い「別格によい」といいうるものでした。
このへんは、小林さん的には神様視されるか変人視されるか、わりとキワドイところです。かつてかないまるもそういう時期がありましたっけ。機構設計者にめんどくさい要求をたくさん出したら、本当に聴きわけているのかと、目隠しされてテストされちゃったこともあります。
でも、ディスクを製造している茨城工場にはプレス盤の音質を監視するこれまた神様がいて「音匠」とは本来は、そういう仕事をしている人たちのことを表しているそうです。そして音匠DVD-Rの試作品も、自分たちの工場で作る関係で音質は聴いており「リクツはともかく、音は確かにいい」と同意したことで、商品化は順調に進んでいました。
6) では何でかないまるに応援要請が入ったか
実は音匠には、緑の色素以外に微量の粉末が練り込まれています。これは「とにかくなんでも試してみる」という試みの中で、高音質化のひとつの手段として試されたものです。音匠に使われている素材は純度の高いものばかりなので、振動が発生した場合減衰させる要素がほとんどありません。粉末はその振動を減衰させる効果があるのだろうというのが今のところかないまるの解釈です (ほんとうのところはわかりません)。
ところが、粉末を練り込んだら、小林さんと茨城工場の音の神様の意見が割れてしまったようなのです。「入れる派」の小林さん。「入れない方がよい」というのが神様の意見。ここで行き詰まって相談メールが来たわけです。
7) 実際に聴いた結果
というわけで、粉末の有無の試聴をしましたが、いやー、確かに音が違う。と同時になぜ意見が割れたかもわかりました。入れた量が多すぎたのです。制振材を貼りすぎるとアンプの音が汚れますが、そういうのとそっくりな音がわずかですが聴こえました。
音質というのは、仕上がっていない段階では人によって意見が別れてしまいます。それが仕上がると、いろいろな意見を言っていた人が、一斉に「これだ、これですよ」といい始めるものなのです。
そういう意味では、私が聴いた試作ディスクは粉が入れすぎでした。私の直感では、そのときの1/100程度が適量だろうと判断し「××%くらいが適量かもよ」と予想しておきました。
8) 仕上がった瞬間
実は、粉の量の最終決定の試聴会には、2/100と3/100が用意されるとの連絡がありました。「なぜ1/100をやらないの?」と聞くと、あまりに量が少なくて、実験的に作るには難しいからとのことでした。「でも1/100が音がよかったらどうするの」と押すと、小林さんは「う〜ん」と唸ってました。
実は1/100というのは私の音質調整経験から来る直感が出した値で、結構自信もあったのです。結局その気持ちは小林さんに伝わりました。試聴会には茨城工場の音決めの神様のほか、実際に製造している方も見えましたが、上記の電話のあと小林さんが工場に頼み込んだらしく、なんと1/100を徹夜で作り持参してくださいました。
役者は揃いました。
揃った全部のDVD-Rに同じ条件でまず焼き込みをします。このころには私の音質チューン済みのPCが活躍しています。
まず3/100を聴きました。ところが専門家たちからは「赤がいいねえ」と、まず画質の評価が飛び出しました。実は大概のプロジェクターでは赤の評価は難しいのだそうですが、かないまるの試聴室の赤は、故朝沼予史宏さんの思い入れを実現するように私が常に調整し続けており、赤、それも人肌の色気を仕上げる赤の表現はただならぬものがあるのです (もちろん標準の色温度ではなくプリセットの設定にそれは入っています)。
続いて2/100。またまた「さらに赤がいいねえ、音もよくなっているけど」と色の変化の評価がまた優勢でした。
ところが1/100をかけたトタン「うわ、なんだこの音は。スゴイですね」「さっきまでのと全然違う」と口々に「音の評価」が飛び出し、聴き終わって「いやー、びっくりしました。この違いは大きいですねえ」という感想にまとまりました。音匠の音が仕上がった瞬間でした。
9) 1/100の確定作業
実はこの1/100という量が、それより多い状態より音質がよい理由はまだわかっていません。かないまる説は提示してありますが、検証不能だそうです。しかし、そんな調査はしなくても商品は作れます。とりあえず小林さんは、15/1000 と 5/1000 という、1/100 (つまり10/1000) の前後に振ったサンプルを作り確認試聴をしてくださいました。その結果、やはり1/100が一番よく、どうやら特異点らしいとのことでした。
10)商品パッケージ
では商品パッケージをご紹介しましょう。

これが10枚パッケージの表面です。中は薄型のジュエルケースにDVD-Rが一枚ずつおさまっています。値段はオープン価格らしいですが、だいたい2000円程度だと思います。
このほかに5枚パッケージがありますが、値段は1000円前後。つまり一枚200円前後で、国産DVD-Rの標準的なものの二倍は超えていません (安い!。安すぎます)。
裏面です。いろいろ能書きがかいてありますが、「レーベルコート効果により大音量での音質に差をつけます」という文言は、実は正しくありません。小音量から大音量まで連続的に、実に良好な音質だからです。
ハードコートについては、一般的には音質的に賛否両論のようです。一般に固めの音質になるからです。しかし音匠は粉が効いてます。
音匠は人の声が自然で聴き取りやすく、エア感がたっぷり。さらに低音のリズム感も非常によいのが特長ですが、それを邪魔する硬質感は粉により見事に消えているのです。
11) 評論家はどう見たか
実は光ディスク事業部は評論家とのお付き合いがほとんどないので、私のほうで知っている限りの評論家や有力AV誌のリストを作り、音匠をお配りして評価していただいきました。
すると実際にテストした方から絶賛の言葉が帰って来ました。かないまるのお手紙入りですから、評論家の方々も、まずは「しょうがないなあ」と試してくださったことと思います。でも、聴いてびっくり。その後にアンプの試聴で見えたときに「あのディスクは音がいいねえ。もう少し詳しく中身を教えてください」という会話が一時期続きました。安すぎるんじゃないという反応も。実際安すぎると私も思います。この音なら一枚300〜400円でもいいでしょう。
ただ、たくさん使っていただきたいとのことで、一枚200円程度の値段にしたそうです。
評論家で現在までに一番多く使ったのは、おそらく麻倉さんでしょう。もうこれ以外は使えないとまでおっしゃっています。ディスクをお送りした直後に「いやー、作った人に会いたい」という反応が返ってきました。
ちなみに麻倉さんは、ごく普通の友人の依頼でDVDを焼くときにも音匠を使ったそうですが、オーディオマニアでもなんでもないそのご友人が「先生は特別なレコーダーを使ってらっしゃるのでしょうか、いただいたDVD、とても音がいいですね」といわれたとのことです。これは麻倉さんが直接私に教えてくれた話で「なぜ音がいいか説明が大変でした」とうれしそうに話してくださいました。
12) 最後にオススメの弁
というわけで、音匠。まず音がスゴクいいです。これから年末に向かってDVDを焼く機会も多いでしょう。是非お求めになって試してみてください。大手の量販にも置いてあると思います。なければ注文するか通販で購入してもがっかりはしないと思います。
変な言い方ですが、スゴ録でも結構音質がいいDVDが出来ますから舌を巻くことになると思います。かないまるの試聴室では私の作ったPCで焼きましたが、小林さんは普段はスゴ録で焼いてテストしているそうです。
それと台湾製などのメディアと違い、保存性も非常によいので、安心して使っていただけると思います。だからといって直射日光は避けてくださいね。カーオーディオで使っているDVDが外周からやられるのは、太陽光がディスク挿入口から入り込み、まず外周を殺すからだそうです。秋葉原では店頭の日の当たる場所でCD-RやDVD-Rを並べて売っているのを散見しますが、こういう場所にあるものは、かないまるは絶対に買いません。
というわけで音匠。ぜひお試しになり、常用メディアとしてお使いください。かないまるとしては、この記事で販売爆発となってほしいなあと思っています(^○^)。
よろしく。
そうそう。現在の音匠は、デジタル放送の記録には対応していません。対応すると従来のレコーダーがはきだしてしまうことが多く、まずはアナログ放送用やPCで使えるものから商品化したそうです。たくさん売れればデジタル対応のものもラインナップされるかもしれませんね。そのためにもたくさん使ってください。
(2007年2月12日追記)
お待たせいました。デジタル放送を記録できるCPRM対応版の音匠が、2007年3月に発売されることになりました。詳しくはこちら。