デジタルアンプの増幅原理
更新 040501 (14と15に分割)
初稿 040423
前項でデジタルアンプの必須構成要素がわかりました。ではもう少し具体的にデジタルアンプの増幅の姿を見て行きましょう。
1. デジタルアンプの増幅原理
これは前ページと同じ図ですが、デジタルアンプ共通の動作図です。パワーアンプの出力段の素子はMOS-FETで、それが出力する波形は、オーディオ波形とは見た目のちがうパルス状の波形です。そしてその中に含まれるオーディオ成分だけがLPF (ローパスフィルター) を通過して出てきます。
え、このパルス波形の中にオーディオ成分が入っているのかって?。ごもっとも。そうですね。解説しましょう。
ちょっと大きい図ですみません。一番左の青い波形(A)が、MOS-FETが吐き出すパルス波形です。
この波形をオーディオ成分とそれ以外の成分に分割したのが、中央のオレンジの波形 (B=オーディオ波形) と緑の波形 (C=ノイズ波形) です。
ちょっと目で波形(B)と(C)を足し算してみてください。どうですか。オレンジの波形と緑の波形を足すと、左のブルーの波形(A)に戻りますね。
したがって、もしこのオレンジの波形(B)だけをなんらかの手段で取り出せれば、MOF-FETはパルスを扱っていながらオーディオ増幅をしているといえるのです。
ではこのオレンジ(B)と緑(C)は分離可能なのでしょうか。
結論からいって、それは可能です。理由は図の下段に示したとおり、オレンジのオーディオ成分(B)と緑のノイズ成分(C)は、周波数成分がかなり離れているからです。ノイズ成分の周波数はオーディオ成分より周波数がず〜っと高いのです。
したがって、ある周波数より低い周波数だけ通過させる、ローパスフィルタ (LPF) という仕掛けを使えば、ブルーの波形からオレンジの波形を取り出すことができます。
つまりローパスフィルタはオーディオの周波数は通しますが、周波数成分が高いノイズの周波数は通さないのです。したがってローパスフィルタの出力はオーディオ波形だけとなるのです。
これがTA-DA9000ESのローパスフィルタの現物です。1チャンネル当たりコイルとコンデンサを二個ずつ使った大変に簡単なものです (この画像には2チャンネル分が写っているわけです)。
TA-DA9000ESのローパスフィルタはこのように今まで発売されたデジタルアンプの中で最もシンプルにできています。なぜそれで済むのか。これはS-Masterの演算性能がいいからです。一言で言えば、ノイズ帯域がオーディオ帯域より大幅に右に離れているのです。だからローパスフィルタが簡単になるのです。
では、デジタルアンプのメリットとはなんなのでしょう。項を改めて説明しましょう。
目次をフレーム表示する(目次がないときクリックしてください)