デジタルアンプと呼べる条件
更新 040609
初稿 040424
アナログアンプの代表的欠点が発熱の量と形にあることがわかりました。
ではデジタル方式ではどうなるのでしょう。その前に「デジタルアンプってな〜に」という方も多いでしょうね。ここから話をはじめましょう。
なおこのあとの話は以下の順番で進めて行きますので、あらかじめ念頭においてください。
- デジタルアンプとはなんであるか。
- デジタルアンプはどこかアナログアンプより優れているのか (一般論)
- ソニーのS-Master 方式はどこが優れいてるのか (ソニー方式の優位性)
- 高級機用、S-Master PRO方式とはなにか
では最初の話題、「デジタルアンプとはなんであるか」から始めましょう。
1. デジタルアンプと呼べる条件
デジタルアンプと呼べる条件はなんでしょう。HiVi誌2004年3月号のインタビューでもお答えしましたが、本講座では、以下の条件を満たしたものがデジタルアンプであるとします。
条件1) パルス状の波形を使っていること
パルス状の波形を使い、出力素子をスイッチングさせることにより増幅するのがデジタルアンプのひとつの条件です。前のページに示した図ですが、もう一度示しましょう。
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パワーアンプの増幅素子の出口にはオーディオ波形は見られません。パルス状の四角い波形しかないのです。しかしこれがローパスフィルターを通過するとオーディオ波形が見えてきます。
条件2) デジタル演算でパルスを生成していること
デジタルというのは1と0だけで (つまり二値で) 数字を表現することをいいます。つまり増幅されるパワーパルスは、実はデジタルの数値データなのです。
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このパルス列は、したがって数値演算(デジタル信号処理)で作られていることがデジタルアンプの二つ目の条件となります。
2. パルスの波形の特長
このようにデジタルアンプはパルスの構成を変化させてアナログ波形を作りますが、それは次の二つの要素だけで決まります。
パルスの高さ
パルスの構成 (1と0の組み合わせ)
パルスの「高さ」はできあがったオーディオ信号の音量を決めます。TA-DA9000ESではこれを利用してボリウムコントロールを行っています。
波形を決めるのはパルスの構成 (1と0の組み合わせ)です。上述のようにこのパルスの構成はデジタル信号処理により数値演算で作られます。この演算には善し悪し (うまい/へた)があります。よい演算ほどよい音がします。
パルスの構成は大きく二種類があります。
のどちらかとなります
(第17項で詳しく説明します)。
いずれの場合も、パルスのエッジは、一定周期のマスタークロック上に乗っており、中途半端な場所には現れません。つまり「一定の最小幅か、その整数倍のパルスは、マスタークロックにより制御される」。それがデジタルアンプの本質です。
3. デジタルアンプに似ているがそうではないもの
ここでデジタルアンプに似ているがそうではないものについて少しお話ししておきましょう。1項に二つの条件を書きました。つまり、
条件1)スイッチングアンプであることと、
条件2)パルスの構成をデジタル演算で作っていること、のふたつです。
ところが条件1)は満たすが条件2)は満たさないものが、デジタルアンプと誤解されていることがあります。
たとえばパルスは入力のアナログ信号と三角波を使って比較器を使って、アナログ的手法で作ることもできます。このような方法のパルスを使うアンプは、スイッチングアンプではあってもデジタルアンプではありません。
このようなスイッチングアンプは、ソニーはTA-N88という商品名で、26年前、実に四半世紀前に商品化しています。スイッチング素子は当時最高速の素子であった、厚木半導体事業部の傑作V-FETでした (現在はもっと高速なMOS-FETが主流です)。このアンプは今聴いても独特の魅力ある音がします。
つまりソニーはこうした方式の商品化により、スイッチングパワーアンプの経験が深いのです。これに、CDプレーヤ開発20年のデジタル信号処理や1bitDAコンバータ技術が加わってできたのが、フルデジタルアンプS-Master 方式です。
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