絶縁トランスによる音質改善
(上級者向け)

その1) 解説編
更新 070315
初校 070306


1) まえがき

まずこの画像をごらんください。



PS3の後方に見えるもの。これがPS3の音質を劇的に向上させるんですが、クイズ。この物体は何でしょう。

答は「絶縁トランス」というものです。といっても特別に特殊なトランスではなくて、100ボルト入力、100ボルト出力になっている単なる1対1の、ごく普通のEIコアを使った電源トランスです。そしてこれを入れると、PS3の音質がよくなります。



実はこのトランスは容量が3000VAもある巨大なものです。脇にSACDのケースをおいて画像をとりましたが、いかに巨大かわかると思います。

かないまるは、PS3に絶縁トランスを入れると音質がよくなるという実験を昨年末からずっとやっています。

ただしいまのところ外部の方がお聴きになったご試聴には、絶縁トランスは一切入っていなくて、市販のPS3にメカ補強をしただけの状態でお聴きいただいています。つまりどなたも再現できる状態の音しか使っていません (この記事の後編をUPすると同時にデモ環境を変更する予定です)。

この巨大な絶縁トランスは、その実験の一環で行ったものです。ただし、このトランスは実は大きすぎて、最高の音質を発揮するわけではありません。実はもっと小型のほうが音質はよくて、適正容量は300〜500VA程度だと思います。ちょうどTA-DA3200ESに搭載している電源トランスの大きさ前後が適正だと思います。

では画像の巨大トランスは何者かというと、苦労に苦労を重ねたTA-DA9000ESを設計したときにノイズ除去の検討用に設計して巻いてもらったトランスです (経費で購入したので現存しています)。

設計してくださったのは、TA-DA9000ES/9100ESに搭載しているトロイダルトランスの名品を設計して下さった、某電源トランスメーカのエンジニアさんです (もう70歳を過ぎた方ですが、現役で設計をなさっています)。

TA-DA9000ESは実は最初のころはこれがないと全然音になりませんでした。アンプがノイズの固まり立ったからです。しかし商品となったTA-DA9000ESには全く必用のなくなりました。そこまでTA-DA9000ESはよくなりました。そういうわけで、この絶縁トランスは実は久しぶりに出してきて実験したのです。


2) 絶縁トランスはPS3にどういう効果があるのか

PS3の場合は、大きすぎることは承知でまずは実験で入れたわけですが、果たして音質は劇的に向上しました。比較試聴につきあってくれたTA-DA9100ESの責任者である小松君は、とりあえず音を聴いてのけぞってました(^^;)

なにがよくなるかというと、まず音と音のスキマにある小さな音が、いままでもとてもよく聴こえていましたが、それがさらによく聴こえるようになります。S/N感がとてもよくなり、小さな音が一段と聴こえるようなるからです。

またエアボリウム (具体的にはホールの大きさ) が大きくなりました。これはホールトーンが明瞭になるからですが、ホールトーンは小さな反射音の集合体ですから、実は小さな音が聴こえることと同じです。

ラフマニノフの「ベスパー」という教会でのコーラスを録音したSACDをかけると、いきなり歌っている人数が増えてびっくりします (このSACDは、現在「かないまるのお勧めソフトたち」に追加してあります) 。

最近「お勧めソフトたち」でご紹介したユリア・フィッシャーのバイオリン協奏曲では、バックのオケがやや厳しめだったのですが、それがやさしくなり、この盤の持ち味である凄いホールトーンにさらに磨きがかかります。そしてバイオリンがふわりと浮かぶ楽器のホンモノ感に磨きがかかります。もともとPS3のバイオリンソロの実在感はタダモノではありませんが、それがいっそう良くなるというわけです。


3) なぜこういうことが起こるのでしょうか

絶縁トランスで音質が向上する理由は、ACラインとHDMIラインでできてしまうグラウンドループ (アースループ)が軽減されるからです。

PS3を上手に鳴らすテクニック で、「5) 電源コードのアースは浮かせてください」と書きました。これはAC電源ライン経由で、PS3とアンプが結合することを減らしたいということです。PS3とアンプはHDMI経路でグラウンドが接続されていますが、ACライン側で (交流的な) 結合が強くなると、グラウンドが交流的にループ(輪)になってしまいます。

グラウンドループができると、このループに飛び込む磁力線がループに起電力を発生させ、HDMIケーブルのグラウンドラインに電流が流れ始め、音質を汚していまいます。電流が流れるだけなら無害ですが、輪の形がスピーカの音圧により変調され、接点の接触抵抗も変調されるため、音にクセが付くのです。

そう書いても「デジタル伝送なのになぜ?」という疑問のある方は、「PS3でいい音出そう」の最初のコンテンツをもう一度読んでください。結論だけ再度書くと、デジタル伝送で正確に遅れるのは波形の縦軸だけであり、横軸は一定周期であることが前提のマスタークロックに頼っています。グラウンドノイズは、このマスタークロックをアナログ的に揺さぶるため、音質が変化するのです。


4) 絶縁トランスが必用というのは初耳ですが…

という方も多いでしょう。PS3に絶縁トランスが役に立つという話の裏返しとして、単品オーディオコンポーネントは、絶縁トランスは通常は要らないということになります。実際入れない方がいいのが普通です。

実は単品コンポーネントの多くは、通常は「電源トランス」を積んでいます。この電源トランスの存在がキーなのです。

たとえば「デジタルアンプ」は、なぜかスイッチング電源で作られることが多いのに、かないまるが音質にかかわった、TA-DA9000ES、TA-DA7000ES、TA-DA9100ES、TA-FA1200ESの四モデルは全て電源トランスを搭載しています。その理由は、これらのモデルの設計時点では、そうしないと音質が十分でないと判断したからです (勿論、いつまでもそうだとは、もちろん思っていませんが)。

電源トランスがある場合の状況を詳しく書くと、まずACラインは電源トランスの一次捲線につながれます。オーディオ機器は、これとは別の捲線である二次捲線から電力をとります。そうする理由は、第一義的には、電圧を下げて機器内で必用な電源を作り出すことにあります。

ところが一次と二次の捲線は別々の回路を重ねて巻いただけのものであり、静電的結合 (コモンモード結合) が弱く、グラウンドループを切断してくれる効果もあるのです。数値的にいうと、電源トランス搭載機器は、結合の指標となるACラインとシャーシの静電結合容量が、およそ1000〜5000ピコファラッド程度になります。

これに対してスイッチング電源機器は、AC回路との静電結合容量がおよそ一桁大きくなるのが普通で、これがグラウンドループを作るのです。PS3の電源は非常によく出来ていて、結合容量も少ない方なのですが、それでも電源トランス搭載機器よりは大きいというのが現実です。

そこでこの結合を積極的に切断するために、100ボルト入力100ボルト出力の1対1のトランスを入れることで結合容量を小さくしてあげることで、音質をよくしようというのが、絶縁トランスを使う理由です。


5) 大きなトランスがいいとは限らない

ところが、この結合容量は、一般的にはトランスのサイズが小さいほど小さくなります。しかし絶縁トランスは「電源トランス」そのものですから、あまり小さいと低音感が損なわれます。

したがって最適値が存在します。PS3に使う絶縁トランスは、最低で300VA。最高で500VAくらいだと思います。500VA以上はおそらく不要で、むしろ音質がわるくなると思います。


5) 同じことが起こる機器は多い

単品オーディオ機器は電源トランスを搭載していることが多いと書きましたが、オーディオ機器でないものは、逆にスイッチング電源搭載機器は非常に多いのが現実です。たとえばテレビやモニターはスイッチング電源機器が主流です。プロジェクターもそうです。つまりテレビモニターやプロジェクターも絶縁トランスで音質が向上する機器と言えます。

またPCもそうです。HTPCといって、PCで映画を鑑賞するという分野がありますが、画質はともかく音質はやはりPCという枠組みを出ないことが多いものです。これは、PCの電源が100%スイッチング電源だからです。

実はPCは、HDDをデータ源としてオーディオ波形を作り、小さいながら質のよいPC用スピーカで音楽再生すると、びっくりするくらい音質のよいケースがあります。このへんはPS3が高性能なBDドライブを持つことで、純粋なオーディオ機器より高音質になりうることと通ずるものがあります。HDDにはフォーカスサーボやトラッキングサーボという、スピーカの音圧で乱されやすいサーボがないという、音が良い理由も現実に存在します。

しかし、PCをオーディオ機器とつなぐと音質が良いことはきわめてマレです。理由は、やはりACラインとオーディオラインとでグラウンドループができるからです。したがってPCもまた、絶縁トランスを使ってオーディオ機器とつなぐと、PCが持っている高音質をメインシステムで楽しめる可能性があります。


6) 入手できますか

この「解説編」は、とりあえずAC側の結合が強いと、グラウンドループができるということ。それを軽減するには、絶縁トランスを使うことが効果的であるということにとどめておきます。

確定申告があったのでおもったより遅れましたが、近日中に「実験編」を書き、そこでは秋葉原 (通販も可) で入手できる「アキバ系絶縁トランス」を使って音質を改善する具体的方法を公開する予定です。

この記事は、工学系の技術を習得している方やアンプの自作などの経験のある方向けの、言わば「上級編」とも言える内容になる予定です。

まあオーディオ製品として販売されている絶縁トランスを排除するつもりはないのですが「かないまるホームページ」は実証主義で、かないまるが確認したこと意外は扱いませんので、高額な絶縁トランスは買わないので記事化はないと思ってください。

(続く)