発売後初のメジャー・ファームウエア・アップデート
Ver1.8 が公開されました。

ディザリング技術の組み込みにより音質が劇的に向上
「DVD→HD」の映像コンバートも同時提供

更新 070626
初稿 070524
この記事は、V1.81時点で公開されている情報に、かないまるが解説を加えたものです。


出ました。バージョン1.8。今回のアップデートによる、SACD再生音質の向上はスゴイです。また、いよいよビデオアップコンが公開されました。DVDをHDに変換しますが、これがまた素晴らしい画質です。

その他数多くの改善を盛りこまれたバージョン1.8は、PS3発売以来、最大のメジャーアップデートといえるでしょう。

アップデートの方法やファイルはここにあります (070627現在、バージョン1.81になっています。
バージョン1.80時点のSCEのアップデート内容記事はこちら



今回のアップデート (バージョン1.80時点) は大変に大規模なもので、上記のサイトに行けば、非常に多くの項目からなっていることがわかると思います。なかでもオーディオビジュアル的に興味深いのは、何といっても次の二点です。

  1. ビットマッピング・タイプ1(ディザリング)技術を組み込むことでSACDの再生音質が劇的に向上したこと。
  2. DVDを再生時、アップコンバージョンによりHD解像度で出力できるようになったこと

かないまるのページでは、この二点について解説し、または感想を述べたいと思います。



■SACDの音質を劇的に向上させる「 ビットマッピング」

まずはSACDの再生音質を劇的に向上させた「ビットマッピング」の追加です。

1)追加されたメニュー

[ビットマッピング(Super Audio CD)]というメニューが追加されています。中身は以下の二つ。

アップデート後のデフォルトは「タイプ1」です。従来の音は「切」なので、アップデートが終わると、もうSACDの音質がよくなっています。

旧音質と比較したい場合は、「設定」→「ミュージック設定」→「ビットマッピング(Super Audio CD)」と進み「切」にしてみてください。「切」が今までの音です。「タイプ1」により音質が随分よくなったことがすぐにわかると思います。

2)どんな技術か

従来のPS3のSACDの処理は、1ビット64fsのDSD信号を、176.4kHzサンプリング (または88.2kHz)の64ビットのデータに変換し、その後上位24ビットだけをHDMIに乗せて来ています。

今回のアップデートが「ディザリング」とされていることから、従来の処理は「四捨五入」か「切り捨て」となります (四捨五入と切り捨てどちらかは、かないまるは知りません)。

この処理は英語で「トランケーション」と呼ばれますが、音質的には若干の問題点があります。それは、24ビット以下の小さな信号が24ビットに変換されるとき、24ビットの階段の間に含まれる波形が単純に直線の連続になるため、一種のひずみを発生することです。

と言っても、図がないとわかりませんね(^_^;)。後日、図を使ってて詳しく説明しますが、今日は言葉だけの説明で勘弁してください。

ではこのひずみが大問題かというと、そうでないことは今までのPS3のSACDの音質評価が高いことが示しています。かないまるも音がよいと書いてきました。なぜか。それは24ビットというビット長は比較的大きいものだからです。

しかし、トランケーションによる歪みは、CDが開発された初期の硬くて好まれない音のおそらく主因だったと思われ、24ビットであっても音質に若干のクセを残します。

というのも、24ビットのトランケーションが発生する量子化ノイズ(ひずみ)のレベルは-148dB程度ですが、かないまるは-160dB程度までは人間はひずみを検知すると考えているからです。単独音やノイズだと、そんなに小さい音はもちろん全然聴こえません。しかし量子化ノイズがひずみ的だと、人間はそれを音色の変化として気づくことができます。つまりHDMIの伝送ビット幅は、未処理ではまだ改善の余地があったということになります。

この音質の差は、改善されてわかるものですが、その状況は後述します。

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今回の「タイプ1」のPS3のSACDの処理は、ディザリングです。ディザリングは次のステップで行なわれます。

  1. 長い語長 (PC3の場合は64ビット)のPCMデータに、24ビットのLSBの大略半分のランダムノイズを加える。
  2. 上位25ビット以下を四捨五入して、上位24ビットだけ残し、これをHDMIに乗せる

つまりディザリングとは四捨五入、または切り捨てが行なわれる前に、最少ビットの幅のちょうど半分の幅のランダムノイズを加えることで、オリジナルの波形が自分自身で行なうよりはるかに頻繁にビットの境目を通過させるようにする技術です。

波形自身が24ビットのメッシュを通過して階段状の波形になるのは、一種の歪みですが、ランダム成分があると、メッシュを頻繁に通過するため、波形は単純な階段ではなく、階段の幅のなかを頻繁に上下に行き来する凹凸の多いデータになります。う〜ん、やっぱり図が無いと無理かなあ。後で書きますね。

ところで、デジタル信号は1ビットしかなくても (つまり1と0しかない信号でも) SACDのDSD信号や、S-Masterパワーアンプのように、音楽を再生することができます。

階段の上に乗る凹凸は、この1ビット信号のように動作し、歪み的ではなくて、ノイズ的になります。しかも人間はノイズ以下の音を聴きとることができますが、このノイズは「揺らぎ」という形で階段の一番小さい幅より小さい信号を「聴こえるようにする」能力もあります。

こうした原理により、ディザリングを使うと、歪み感がなく、また「聴こえる」という意味での有効ビット長を1〜2ビット延ばすような効果があります。


2)どんな音質になるのか

ビットマッピング「タイプ1」と「切り」を比較すればどなたも簡単に確認できますが、ディザリングにより音質向上は劇的です。楽音、人間の声、打楽器、自然音など、すべての音色がナチュラルになります。

また、ひずみが解消されることで邪魔者がいなくなり、さらにノイズ以下にも音楽成分が聞きとれることの相乗効果でしょうか、空間情報がより充実しています。音場の生々しさが増し、教会やホールでの録音では建物の大きさを広く感ずることができます。

音色の改善で際立って変わるのは、バイオリンでは弦の音とピアノの音でしょうか。

弦のエッジに若干くっついていたヒリツキがとれて、弦の音がスムースでふくよかになります。バイオリンの木製の胴のふっくらとした音もよく聴こえるようになります。オーケストラのトゥッティーにわずかにあったやや硬めの表情も完全に消え、自然極まりないアンサンブルが空間を飛翔します。

ピアノはひとことで言うと楽器そのものが変わってしまいました。アップライトからグランドへ変わると言ったら、言い過ぎかなあ。でもそんな感じ。

かないまるのお勧めソフトたち」でご紹介しているソフトを例にすると、まずユリアフィッシャーのバイオリンコンチェルトでは、柔軟性を増したオーケストラがステージを展開し、その一番前にユリアフィッシャーのバイオリンがフワっと浮かび上がり、なんとも表情豊かに音楽を奏でます (彼女は指揮台の上で演奏しています)。

児玉マリのピアノソナタ は、もう笑っちゃうしかないでしょう。まさにグランドピアノがよみがえります (いや、いままでもすごかったのですが、さらにすごいということです)。

ポピュラーもいいですよ。お勧めはピンクフロイドの狂気です。1973年の録音。大変古い録音ですが、この録音はもともとマルチチャンネル再生用に録音されています。というのもこの楽曲が作られたのは、かつて団塊の世代がオーディオに没頭していたころ一瞬はやった「4チャンネルステレオ」用に制作されたものだからです。

その 3〜4トラックをかけると、空間をフルに使った密度感がまずものすごく分厚くなるのがわかります。すごいすごい。そしてタッタッタッ…とい足音が遠くに消えて、それに被るように聴こえてくる楽曲「タイム」、そして柱時計の鐘の音。これはもうドラマチックとしかいいようがありません。

ジャズボーカルもいいです。ハイブリッドSACD版のダイアナクラール「The Girl in the Other Room」からTemptationを聴いてみてください。まず冒頭のベースがいい。あー、こんなにしみるような音質だったんだとかないまるは感動しました。そしてダイアナクラールのボーカルがまたいい。けだるさを装いつつも、実はホットな情感。それがすっと心に入ってきます (ちなみにこのボーカルに綾戸智絵を感じるのは私だけ?)。

ホールトーンの改善効果は、特に例示するまでもなく、ほぼすべてのクラシック録音で感じ取ることができると思います。

というわけで、PS3のSACDの再生音は、よりナチュラルで音楽的になりました。いやあ、ビットマッピング「タイプ1」。素晴らしいです。



■DVDのアップコンバート出力

次は「待ってました」のアップコンです。DVDの映像をHD解像度にアップします。

1)追加されたメニュー

[設定]の[BD/DVD設定]に[DVDアップコンバート]が追加されています。

通常は「ノーマル」がいいでしょうね。「2倍」というのは走査線がDVDの480本の2倍である960本に拡大されます。1080本に対して120本足りませんが、足らない上下は黒になります (左右の黒もノーマルより幅が増えます)。この「2倍」は補完アルゴリズムが簡単なのでしょうね、ノーマルよりきれいな画質になります。

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かないまるの画質的感想としては、2倍とノーマル、どちらもきれいです。信じがたいほどきれい。比較すると2倍のほうがきれいですが、ノーマルも十分きれいです。

まずDVDのブロックノイズが目立ちません。それでいながら人物や金属の質感、機械の斜め線、自然物の自然さなどは実にきれいにアップされます。

これはPS3のDVDアップコンが、コンバート時に映像をまず解析して分類。その後要素ごとに「好ましい」スケーリング処理をするからだそうです。要素抽出時にノイズと判断した部分はノイズが成長しないようにしているそうです (出典は本田さんの記事)。要するに賢いアップコンなんですね。

かないまるが感心したのは、元の映像に解像度がある時は、たとえば髪の毛が細かく見えるように先鋭度があがるのに、元の解像度がない場合はちょうどソフトフォーカスレンズを使ったように見事に柔らかくボケてくれることです。

実はかないまるは、DVDの映像が解像度不足だとすぐに目が疲れてしまいます。TA-DA9000ESの設計で体調を崩してからはよけいにそうです。ところがアップコン後の画質は、解像度がないときはソフト基調になるように見えます。そのくせ文字なんかは、ちゃんとしたフォントを埋め込んだように鮮明です。本田さんの記事で「アニメ画質へのこだわり」が報じられていますが、そういうのが聴いているんでしょうね。


というわけで、バージョン1.8。すごいです。急いでアップしましょう。なにしろこの内容でタダですからね。

太っ腹だなあ>SCE。