ケーブルのヘソと音質調整
その2
ヘソ・チューンの実際
120830初稿
ヘソチューンとは、簡単にいうと、ケーブル上の振動(定在波)の状況をつかみ、そこにメカ的な加工をすることです。
ケーブルはスピーカからの音圧により振動しますが、特定の周波数で共振し、より大きく動きます。
たとえばこの図で(1)が振動のない状態とします。 (2)は基本波で、ケーブルの中央が振幅します。(3)はもっと高い周波数が乗った場合です。
基本的に両端は機器にささっているので振幅はありません。高いケーブルは太く重く丈夫なので、あまり細かい振動はのりませんがケーブルが振動することは事実。そして振幅があればコネクタのところには接点をこじるような振動が入ります。そこは電気接点なので、接触抵抗を変化させることで音質に影響します。
(4)は、ケーブルに折り癖がついているようなケースを想定した図です。折り癖があると、そこでさらに折れ曲がるような感じで振幅したり、折り目を両端として分割振動したりします。ケーブル上の振動はどこで起こってもコネクタに到達します。なぜならケーブルは金属を樹脂でくるんだもので、糸電話のように振動を伝えやすいからです。
大阪でデモした「湯せんで音がよくなる」のは、この折れ癖がなくなることと、ケーブル全体が柔らかくなり、おとなしい振幅になるので音がよくなるのです。
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さて、冒頭触れたように、デジタル、アナログに限らずオーディオケーブルというものは耳でチューニングされています。振動の起こらないというものはありませんが、振動しても各周波数でバランスよく揺れて大きなクセにならないようになっています。
しかし中には値段ばかり高くてクセのあるケーブルもあります。希に試聴不十分なケースもあるようですが、リスナーが使っている環境がチューニング環境とずれている場合にもおこります。特にデジタルケーブルは条件の幅が広すぎて、そういうことが起こりやすいかもしれません。
テープ技
このような場合、振動の腹をテープでダンプして調整するのが、テープ技です。テープでクセを殺すわけです。
ことの発端をご紹介しましょう。これはかないまるがもう20年近く使っている同軸デジタル用のケーブルです。テフロンの絶縁体と銀メッキの導体を使った潤工社の同軸ケーブルDFS-080に、WBT製のピンプラグ(もちろんオーディオ用)を付けたものです。
ちなみにDFS-080は個人の趣味から見つけたものですし、16年前に朝沼さんに請われて内容も公開もしているので秘密ではありません。すごくしっかりしてエアも安定に出してくれます。現在も買えますが、ネックは100メートル単位でしか購入できないこととかな。
このケーブルはシースもFEPというテフロン樹脂なんですが、問題が一つあります。それは印刷ができないので、方向が見た目ではわからないことです。とにかく聴いて方向を決めるしかありません。
方向をいったん決めると、なにかマーキングしておきたいものです。そこで普段使っているテフロンテープを信号の出口側に巻くことにしました。一応念のため、テープを貼って音が悪くならないことを確認。
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あら。テープを巻いた方が音がいい。そこでもう一本のバックアップもテープを巻きました。すると同じ効果がある。いろいろ調べたら、テープを巻く位置に最適な位置があることもわかりました。これがヘソワザの始まりです。
始まりがそういう理由なので、かないまるは必ず信号の出口側でこのワザを使います。
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では場所はどうやって探せばいいのか。それは聴くしかありません。
方法の一つが、ガムテープをφ5ミリくらいに裏巻きしてケーブルの上に載せるという方法があります。差は決して大きくありませんが、場合によってはガラっと音が変わることがあります。普段使っているものより、クセを感じてオクラ入りしたもののほうが試し甲斐があるでしょう。
これはかないまるのいつもの方法で、指でケーブルに軽く触り、じりじりと動かしてゆきます。フッと音が変わる(低音がたくさん出たり、クセがおとなしくなったり)ところを見つけます。
この方法は連続的に場所をサーチできることです。結果が速い。でも相当心頭滅却しないとできません。なんでも試聴はそうですが、こういうのはまさに予断が入ったら終わり。全くわからなくなります。心を無にして聴きます。
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場所がわからない場合は、次のどれかです。
そもそもそのケーブルがよくできているか、リスニングした環境にマッチしている。
システムにそこまでの差を出す能力がない。
わからないと思い込んでいる。
まあ、変わらなければなにもする必要がないので、それはそれでよいことですが。
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場所が決まったらどうするか。標準的なのはテープを巻くことです。
効果が大きいのはこのテープ。有名なテフロンテープです。厚み0.13が使いやすいです。もともとはポリ袋の口を熱で閉じるシーラーという機械で、ポリ袋が加熱部分にくっつかないようにする離形テープとして作られたものです。茶色いものや繊維が入っているものなどいろいろなのがありますが、単純に白いテフロン樹脂だけでできているのがこれです。
HiViさんの付録のUSBケーブルのヘソは端から38ミリでした(記事参照)。もし持っている方は、是非やってみてください。音場感や低音感が変化すると思いますよ。何周巻くか、何か所巻くか。結構楽しめると思います。
巻くものはセロテーブでもビニールテープでもかまいません。最も効くのは赤糊のガムテープです。もの凄く変わります。でも経時変化で音がかなり変わり、定期的に交換しないとべとつき、最後は固まりますので念のため。
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というわけで、HiVi誌の反響が大きかったのでヘソのワザをご紹介しました。もう一度かいておきますが、もし音が変わらなければ特に気にしなくても結構ですが、チューンされた環境ではきっとなにか変化が見つかるでしょう。もしかないまるが推薦している平型ケーブルを持っている方はよーくみてください。なにか、ありますよね。
かないまるが設計に加わった7万円のHDMIケーブルは金メッキされたプレートが巻き付けてあります。何だろうと思った方も多いでしょうが、もちろん振動コントロールです。ただしこちらの詳細は企業ヒミツです。