ケーブルのヘソと音質調整

理論編

振動が時間軸を揺らす?


120830初稿
120903更新(図を追加、かないまる説を追加)


かないまるはHiVi誌の2012年9月号でHiVi誌の付録のUBBケーブルを聴きました。ケーブルは20センチしかなくて短いのにびっくりしましたが、なかなか楽しい経験でした。 記事はこちらです。

そのなかで「ケーブルのヘソにテープを貼って音質を調整する」というワザを公開しました。しかし簡単すぎる紹介で、ご覧になった読者のかたから質問が飛んできました「ヘソって本当ですか」。なかには「オカルトは止した方がいいのでは」というご意見も。

まあそうですよね。オカルトかと思われた方も多いでしょう。でもこれはオカルトではありません。ケーブルにはスピーカの振動が入りますが、幾つかの周波数で共振していて、それが音質にクセをもたらします。

ここでは振動が時間軸を揺らす原因を解説し、ヘソのノウハウも説明したいと思います。

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いわゆる高音質ケーブル (必ずしも高額ケーブルではなく) のどこが高音質なのか。パケージには電気的な性能がかいてあるのが普通ですね。またここしか理解しない方も多いと思います。しかし高い評価をとるような商品は必ず機械的な響きのチューニングがなされていて、実はこれがとても大きいんです。

振動と音の関係は、本体シャーシの中で起こることと、ケーブルで起こることは同じです。まず振動が接点に入ります。すると接触の状態が変わり振幅変調がおこります。つまり波形の高さが振動で変動するのです。そしてこの振幅変調の音への影響はアナログケーブルにくらべるとデジタルケーブルのほうが顕著です。

「えっ」と驚くでしょうが本当です。

振幅変調は、アナログ信号では大きな悪影響はあまり起こりません。なぜなら人間は、振幅変調にはそもそもあまり敏感ではないからです。

それよりはワフフラッターのほうが全然問題で、それは機器の善し悪しを決定的に決めるスペックでした。特にアロナグテープではキャプスタンのところで起こるテープの進行方向の微細な揺れがものすごく問題で、高級機とローコスト機でもっもと差が出るところでした。これは人間の耳が時間軸の変調(FM変調やPM変調)に敏感だからです。

でもアナログ機器で時間軸の揺らぎが発生するのは機器の中だけで、ケーブルではほとんど発生しませんでした。つまりユーザが時間軸をケアする必要はありませんでした。

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ところがデジタル信号の場合は、振幅変調が時間軸の変調に化けるという問題があります。



これはデジタルオーディオの原理図です。一定の時間間隔ごとに数値データが電圧(又は電流)に変換されて波形ができます。この立軸の高さはデータにかいてありますし、最近のDAコンバータは0.01%以下の正確な変換をします。また、たとえ縦軸が多少狂っても、上述のように人間はそれには鈍感です。

問題は横軸です。「一定の間隔」が難しい。これはクロックといいますが、正に時計で、デジタルデータで書いてあるわけではありません。水晶発信器で作ったり、伝送波形からPLLという回路で抽出したりします。特に問題は伝送波形から抽出する場合です。衛星放送なんかかなり遠くから来る信号なのでクロックが揺れやすい(というか常に揺れている)のです。



クロックが揺れるとどうなるか。図のように波形が横にずれます。縦軸は全く変わらなくても横軸が変わると波形が変わります。しかも人間はこの方向への波形のずれに比較的敏感なのです。

そしてジッタはケーブルの振動を原因としてケーブルと機器の接点でも発生します。つまりオーディオユーザ自身がケアすることでケーブルの実力が出るという世界なのです。



これがその説明図です。青と緑が伝送波形。茶色とピンクが受信側で再生した波形です。上の青は伝送状態がよいとき。下の緑は接点などに振動が入り振幅が小さくなるイメージです。



拡大したものです。受信側では赤の点線のレベルで0か1かを判断します。これをスレショールドレベル(しきい値)といいます。ところが伝送路の波形は0から1に変化するのにすこし時間がかかります。これを立ち上がり時間といいます。

振動が入ると振幅が変動します。これは接点の接触がよくないと問題になりますが、微視的にみれば接点では必ず発生しています。ケーブル内の誘電体に振動が入ると伝送路の形が変わり、伝搬遅延時間が直接変わりますが、振幅も同時に変わります。

振幅が変わっても受信側で1か0かを判断するスレショールドは変わりません。ところが立ち上がりには時間がかかるので、振幅が小さいと立ち上がりが遅く見えます。つまり青が緑になると、茶色がピンクになるんです。茶色やピンクはデータだったりクロックだったりしますが、クロックは直接音を変えます。データは無害化というと、立ち上がりや立ち下がりのエッジはノイズ源なので、そのノイズが現れる時間がグラグラするという経路で音質を劣化させることがあります。

このように信号に時間軸の揺れがあることをジッタといいます。ジッタはいろいろな原因で発生しますが、ケーブルでも発生するということです。



ジッタには値が大きいが(すごく揺れているが)ありま音質に害のないものもあります。一般的には大きなジッタがあると音がボケますが、くせがなければ音楽鑑賞の邪魔にはなりません。

その一方で、ほんのわずかでも音質に害のあるものがあります。ケーブルで発生するジッタは値としては凄く小さいのですが、人間は敏感に差を感じ取ります。



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ヘソチューンとは

簡単にいうと、ケーブル上の振動(定在波)の状況をつかみ、そこにメカ的な加工をします。いろいろな方法がありますが、簡単で元に戻せる万人向きの方法が、定在波の腹(振幅の大きい場所)を見つけて、そこにテープを貼ることでダンプするという方法ですのでご紹介しましょう。

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