AVQ&A

絶縁トランス関連のQ&A
(お二人の質問を元に構成したのQ&Aです)

初稿 081120

ご質問1)

かないまる様のPS3関連の記事を拝見しましたが、簡単にいうと「スイッチング電源の機器だけ絶縁せよ!」ということでよろしいでしょうか。

お答え1)

まあだいたいそうです。ただしかないまるは、トランス機器への絶縁トランスの使用を全面的に否定しているわけではありません。

たとえば私は「実際入れない方がいいのが普通です」という書き方をしています。これはオーディオは物理的にケースバイケースだということ。その一方で、どんな状態であれ好みがあえばOKという趣味の分野なので、完全に決めつけるのも難しいと思っているとさせていただきます。



ご質問2)

PS3の記事を拝見してから改めて考えてみますと、トランス式電源のトランスは結局のところ絶縁トランス兼減圧トランスなわけで、絶縁性という意味では内蔵されたトランスより大容量のトランスを新たに絶縁目的で使うことには何ら意味がない(むしろ絶縁性の意味では害悪)と理解しましたが、正しいでしょうか。

お答え2)

意味がないということはないので正しくありません。トランス電源のオーディオ機器でもトランスの設計が悪かったり、ノイズ止めの処理が悪くてシャーシとACラインの容量が大きくなっていたり、機器内部のノイズが多すぎるものは、絶縁トランスは効き目があります。たとえば1980年代のCDプレーヤは100%トランス電源ですが、当時はノイズが非常に多かったので、絶縁トランスはよく効くケースが多いです。



ご質問3)

オーディオ愛好家の間では、絶縁トランスを全ての機器に使うのが正しいといった信仰のようなものがあります。少なくとも上述の理解に基づけば、絶縁性能を理由に音質の向上を謳うのは誤りであるように思いますが、これは正しい理解といえるでしょうか。

お答え3)

ケースバイケースなので、正しいとも正しくないとも言えます。

逆にPS3や映像機器は、電源回路がオーディオ機器の常識を知らずに作られています。このような場合には絶縁トランスはとても役に立ちます。

ではトランス電源機器に絶縁トランスを入れれば絶縁性能がよくなるかといえば、それはそのとおりです。しかしそれで音がよくなるかというと、そういう一般論はありません。よくできたオーディオ機器は、絶縁トランスなしでご機嫌に鳴るのが普通です。なぜならオーディオ機器は普通の商用電源でちゃんと鳴るように設計されているからです。

一方で、絶縁トランスを使うと効果的なケースもあります。それは外来のノイズ (商用電源に含まれるノイズ) が多い場合、そのノイズをカットするという使い方をする場合です。この場合は全部の機器に絶縁トランスを入れるというのは、間違っているとは言えません。

特に工業地帯に近い場合や、住宅地でも電力会社の柱上トランスの数が少ない地域で夏場全家庭でエアコンを使っているような時期には音質劣化が大きく、オーディオ機器の電源をトリートメントする装置を装備する必要性を感ずる人がいても不思議ではありません。その代表的な方法のひとつが、全機器に絶縁トランスを入れるという方法ということになります。

ただ、上記のようにオーディオ機器の設計者は、通常は絶縁トランスが入ることを前提としては設計していませんので、設計者の意図どおりの音が出るかというと、難しいと思います。

というわけで、要はケースバイケースで、オーディオは趣味ですから信仰もあってかまわないと思いますが、本当によくなっているかどうかは、たとえばブラインドテストなどで冷静に判断するのがよいと思います。


ご質問4)

個々の機器ごとに絶縁トランスを入れる以外に、商用電源からの外来ノイズを処理する方法はありますか。

お答え4)

まず、大型の絶縁トランス (ノイズカットトランス)を一個使い、1−2次間の相関シールドを接地し、外来ノイズを完全に遮断してしまうという方法があります。

この場合は、すべてのオーディオ機器を同じ絶縁トランスの支配下におかないとえってループができますので、トランスにはかなり容量が必要です。概ね50A(5KVA)あれば、低音不足になることはあまりなく、十分によい音質が得られるでしょう。この方法は電源のノイズ環境の悪いところでは強烈に効きます。

そのほかの電源波形そのものを電気仕掛けで作りなおすという方法があります。

大昔はこの目的のために、商用電源を使ってモーターで発電機をまわす「電動発電機」というものがハイエンドマニアに使われた実績があります。モータは同期電動機が使われたので、周波数も狂いませんでした。

現在は巨大パワーアンプを使って電源波形を作り利用するものがあります。この形式のものは外来ノイズのカットに加えて、電源安定度の向上(インピーダンスの低下)や波形の正常化が可能です。特にアナログパワーアンプ方式のものは、あまり欠点がありまんせん。

しかし、このパワーアンプがスイッチングアンプで作られているものも多く、チョッパ型電源装置と呼ばれますが、装置自身がノイズを出しますので、必ず音がよくなるかというと難いところがあります。チョッパ型でも厳重なノイズカット処理をしたものもあり、結構よい製品もみたことがあります。

電源トリートメント装置は海外ではかなりよく使われているようで、実は私も海外のデモでつかったことがあります。ドイツと北米でデモしたときに、現地が用意してくれていたので使ったのです。どちらの場合も使うか使わないかを比較してみましたが、たしかに使った方がよい音がしました。

ただし、一台500万円〜1000万円というような価格で、決して安いものではありません。ただまあ馬鹿高いスピーカケーブルを使うよりは投資効果は大きいと思いますが…。経済力がある方はどうぞ。

まあ私の守備範囲は、現在は20万円程度のAVアンプを中心とした機器なので、そこまでのものは通常は必要としません。


ご質問5)

トランス式電源のオーディオ機器に後付で(相対的に)大型の絶縁トランスをいれる場合、機器に内蔵している(相対的に)小型のトランスのみを使う場合と比べて静電結合はどうなるのでしょうか。

お答え5)

機器内のAC電源対シャーシ容量C1と機器外に設置した絶縁トランスの1-2次結合容量C2のシリーズ値Cとなります。

CT=(C1×C2)/(C1+C2)   (「和分の積」と覚えます)

例 内部1000pf、外部トランス1000pfの場合、1000000/2000=500pf


ご質問6)

静電結合は機器に最も近い部分のトランスが支配的であるようにも思えるのですが、いかがでしょうか(これが正しいなら外部の絶縁トランスは静電結合容量の点では特に意味がない)。

お答え6)

静電結合容量C自体は内部と外部の容量のシリーズ値ですから、数学的に一意に決まります。つまり結合容量的には、どちらが支配的かということはありません。

ただ、機器内部のトランスは捲線とシャーシの間に空間的な静電容量があり、シャーシの強度などに敏感に反応します。ですから、機器内部のトランスのほうが設計ははるかに難しいです

たとえばPS3用にご紹介した市販のトランスは、機器外で使うには十分な音質が得られますが、この設計のものをアンプ内で使おうとしても恐らくオーディオ機器の最低レベルにも達しないでしょう。


ご質問7)

かないまる様がご指摘になったノイズというのは、オーディオ機器が発する、もしくは外部の電子機器から発せられる特に高周波領域のノイズが交流の電源コードを経由して相互に悪影響を及ぼすものという理解でよいでしょうか。

お答え7)

相互に悪影響というのはあまり考える必要はありません。アンプ内部に入り込むノイズの総量と周波数成分で音質劣化の程度が変わります。


ご質問8)

絶縁トランスは電磁誘導によって電気的には1次側と2次側が繋がっており、全変成のものが多いが、遮蔽変圧器(シールドトランス)では少なくとも低い周波数のものは防止できる(あとはシールドの性能次第)、という理解でよいでしょうか。

お答え8)

低い周波数というのがどのくらいかわかりませんが…。

遮蔽変圧器(シールドトランス)、またはノイズカットトランスと呼ばれるようなものは、まずノーマルモードノイズをフィルタリングでカットするように作られていることが多いです。ただしあまり低い周波数まで落とそうとすると電力ロスや発熱が起こるので、そこそこに設計されているようです。

PS3用にご紹介したトランスも、二次側にC-Rを入れると、誘導リアクタンスとの間でフィルタを構成することができますが、音の勢いがなくなりやすいことと、素人の方がやると危険なのでご紹介していません。市販のノイズカット用のトランスもややおとなしい音になりがちですが理由は同じです。

一方1次捲線をシールドで包み、それを大地に接地することで除去されるのがコモンモードノイズです。これはよほどシールドが下手でないか切り、周波数に関係なくノイズはよく抑制されます。もちろんシールドの1次捲線の包み込みが十分でない場合や、接地ラインのインピーダンスが高い場合は、高周波の抑圧が弱くなります。そういう次元での話なら「性能次第」というのはたしかにそうなります。

ちなみに商用電源ライン自身も大地グラウンドされているので、オーディオ機器の一部を接地した絶縁トランスにぶら下げ、他の部分を通常のACラインにぶら下げると巨大なループを作ることになりますのでやってはいけません。PS3の記事で1-2次間シールドをどこにもつながないのは、このためです。


ご質問9)

かないまる様のPS3とトランスのページでは、300VA〜500VAのものを推奨しており、容量が大きくなると低音感が増すとの記載がありました。確かに容量の大きなトランスは低音が豊かになり、ピラミッドバランス的な帯域バランスに感じられることが多いように思います。
こうした聴感上の変化を直ちに物理的な理解に結びつけるのは難しいのかも しれませんが、大容量であればトランスが持つ固有の共振点が低い周波数になったり、大容量になることでトランスの電圧変動率が低くなることが仮説として考えられるということでよいでしょうか。

お答え9)

低音感が増すのは、電圧変動率が低くなることが主たる理由です。