AVQ&A

Q&A 9-1の続き

初校 080712

追加のご質問1)

これで行くと例えばHDDにリッピングすると、結果としてデジタルのデータとしての処理にならざるを得ないのでノイズの処理がうまければよっぽど音が良いとか?


お答え1)

ピンポ〜ン。


追加のご質問2)

LANでパケットに分割してデータを送れば、何をどうあがいても送出側のクロックの揺らぎなんて関係もしようがありませんね。だから音が良い?


お答え2)

ピンポン・ピンポン・ピンポン・ピンポ〜ン。

オーディオでは「フロー制御」という言葉がキーワードになります。「苦労して実現するもの」です。でもPCのデータ伝送では、あ・た・り・ま・え 。

この点に関しては、オーディオとPCはお互いを知らなすぎます。

まずオーディオマニアはPCのことを勉強していないケースが多いと思います。工学的知識を背景に趣味としてオーディオを楽しむことができる方は、固定観念に縛られず隣接する工学の常識をオーディオに活かして行くことをもっと考えるべきです。たとえばPS3が音がいいというのは今では多くの人が知っています。でもPS3の音の良さは、オーディオの設計常識ではなく、PCの設計常識が作り出したものです。

一方PCの世界の人、とりわけソフトウエアの世界の人は、データが同じなら結果は同じ (であるはずだ) という思考にとらわれがちです。しかしそれはとっとと捨てるべきです。

PCの数値データは、その伝達手段としてアナログの電圧波形現象があり、そこには波形のゆがみや時間軸の揺れがあるのです。その波形をレベル的にどこかで切って1と0にして、時間軸上で一定周期ごとに取り出したものが数値データです。縦軸にも横軸にも余裕があるので伝送は安定。これがデジタル伝送の本質です。

しかしデジタルオーディオはそうではないのです。オーディオ的には、数値データではなく、その背景にある電圧波形そのものがアナログ的に関与するからです。

たとえば、16bitの分解能は1/65536です。CDのサンプリング周波数は44.1kHzですから、一つのデータは22.675マイクロ秒。数値データ的には、数マイクロ秒程度ずれても全く影響はありません。

しかしオーディオ的にはそうではありません。数値データは電圧になおされますが、その電圧は正確に22.675マイクロ秒維持されてから次のデータに対応する電圧に変化し、続く22.675マイクロ秒はその新しい電圧が維持される。これが正確に繰り返されて行かなければ正しい音になりません。

ここで縦軸の電圧は、もちろんフルスケールの1/65536の半分よりずれてはいけません。半分以上ずれると15bit精度になってしまうからです。もっとずれるとどんどん音が悪くなります。と、ここまではPC屋さんでも理解できます。

ところが、これは22.675マイクロ秒ごとに正確な時間間隔で変換が行われた場合で、その時間幅、つまり横軸がずれても縦軸同様に精度が落ちてしまいます。

横軸で16bit精度とはどういう時間でしょうか。一つのデータが維持されるべき時間は22.675マイクロ秒。16bit精度が維持されるには、一つの電圧が維持される時間幅はその1/65536の0.35ナノ秒の正確さが維持されなければいけません。つまり電圧波形の変化点が0.35ナノ秒の半分ずれる (これをジッタといいます) と、もう16bit精度ではないのです。デジタルオーディオ機器の設計者なら、この程度の横軸精度を保つのが結構大変なことをよく知っています。

さて、16bitでも大変だったのに、最近主流になりつつある24bitでは、16bitの1/256がジッタの許容量となります。これはなんと1.4ピコ秒程度しかずれてはいけないことを意味します。しかしこの程度の時間ずれは、ケーブルを引っぱたけば簡単に発生します。ケーブルを叩くとケーブルの断面が幾何学的に変形して線間の分布容量が変動。すると伝送速度が変化するので、ジッタが発生します。コネクタの接触部に振動が入ってもジッタになります。いずれもスピーカの音圧で簡単に変形します。だからケーブルで音が変わるのです。

もしこのことがこの程度の説明で理解できない人は、オーディオの世界をオカルト視する発言をしてはいけません。わからないのなら黙っているか勉強すべきです。事実として起こっている「音質が変わる」という現象にもっときちんと対峙し、理由を考えてみるべきです。実際オーディオエンジニアはこの領域で苦労しているのです。

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さて、質問者がお書きになった「ノイズの処理がうまければ」という言葉は、まことに正鵠を射ています。データをためてクロックを分離すれば磐石かというと、絶対にそうではないからです。

たとえば理論的にジッタを除去できるオーディオシステムを構築しても、プレーヤの出来不出来は音に反映してしまいます。

なぜならプレーヤから受信したデータをメモリに書き込むまでの間に、データやよごれたクロックを機器内で扱う必要があり、そこでデータ波形のエッジ部分の微分波形が電源やグラウンドに注入されてしまうからです。注入されたノイズは機器内のあらゆるところで反射してもどって来て、最終的にDA変換用のクロックに刺さります。クロックにノイズが刺さると電圧が少し変動しますが、そのせいで1/0を切り分けるスレショールド電圧をよぎるタイミングがずれます。これを数ピコ秒以下に納めるのが難しいのです。

そういうわけなので、インターフェイスがジッタを含んだ信号を受信したら基本的にその影響はガンのようにDA変換波形に転移し、結局無かったことにはできないのです。

ですから「送り機器は絶対に真面目に設計され、健康的な波形を送出しなくてはならない」のです。そしてそういうオーディオ機器は高額になりがちなのです。もちろん趣味性に走りすぎて高額になりすぎるのは考えものだと思いますが (まあ趣味の商品なので否定するものでもないのですが)、かといって、機器もケーブルも、きちんと作ると安くはできないものなのです。。

まとめましょう。

オーディオは、正しい考え方をすれば確実に音がよくなります。どのくらい音がよくなるかは、どのくらい考えて、正しいことを知っているかで決まります。その点ではプロもアマチュアも同列です。実際プロより多くのことを知っているアマチュア、マニアがたくさんいます。そして音を知る人の間には、プロアマを通じて多くの共通認識があります。

しかしその道筋を理解しようとしない方には、我々の努力がオカルトに見えることもあるでしょう。本質を見抜き、善意に満ちた評価記事を書いたライターさんが「あなたが信じられなくなった」と抗議されることも実際にあるのです。

でも結局よい音のするオーディオ機器は、正しい考え方をもって仕事に臨んだ人が作るものです。そういう仕事はよい結果を生み、「非難した人」も「勉強しない人」も結局は認めてくれます。いざ自分がオーディオ機器を買おうと思ったとき、はやり音がいいモデルを選ぶことになるという現実があるからです。

ご理解ありがとうございます。