AVQ&A

デジタルアンプと電源電圧
初校 070515

ご質問

S-Master PROは電源電圧はフルではないとのことですが、心情的には出力回路に常に最大電圧がかけられているほうが音はふくよかになると思いますが、デジタルではこの方程式は通用しない?。

お答え

しません。というか「最大電圧をかけた方が音質がよい」という事実は一般化できません。使用するデバイスや回路の設計により、低い電圧のほうがよい音のするアンプはいくらでも設計できます。

むしろハイパワー=高電圧ですが、電解コンデンサの耐電圧を上げるためコンデンサの化成皮膜が厚くなります。化成皮膜は硬いので、コンデンサの音が硬質化しやすくなります。ハイパワーアンプほど徹底的なエージングを要するのは、元の音が硬いからですが、その主因は電解コンデンサの化成皮膜が厚いからです。

TA-DA9000ESを設計するときに一番手間が掛かったのがこの点です。高電圧仕様で柔らかい音のコンデンサを作るのは勿論目標のひとつでした。アナログアンプ用の電源用電解コンデンサは、フル電圧かけて音がいいように作ってあり、目標はそれで終わりです。

しかしデジタルアンプ用は、電圧が可変されますので、どの電圧で使用しても、常用領域の電圧範囲の音を学習して、すぐに音がよくなるように作る必要があります。デジタルアンプ専用の部品と言うのはあるのです。

このへんは、アナログのオーディオアンプを作った経験だけではできません。部品メーカと山ほど仕事をしないとできません。

TA-DA9100ESに使っている電解コンデンサを作ったのは某メーカーの女性エンジニアですが、実は私が初心者のころから指導した方です。すごく感性がよく、男だけではできない部品になりました。

TA-DA9000ESのときは、もっとも主要なブロックコンデンサ(つまり大きなコンデンサ)だけが完成し搭載になりました。

その後塩ビが使えない、鉛も使えないという「環境対応」に成功したのはこの方が作った部品だけで、TA-DA7000ESはすべての電解コンデンサが彼女との共同作業で作ったものに変わりました。TA-DA9100ESやTA-DA3200ESでは、音質バランスをより良好に保つために二社のコンデンサをblendしていますが、基本は彼女の作品でできています。

ともあれ、部品メーカさんとの共同作業は重要で、試聴を繰り返し、全く新しいタイプの電解コンデンサを作り、そしてデジタルアンプがよくなったのです。TA-E9000ESのときはこのへんがわからなくて本当に苦労しましたが、最近は分かるようになってきました。

一段落してアナログアンプに戻ってみると、視界がとても開けていました。デジタルアンプで使える部品は、アナログアンプでもよい音がするんです。アナログアンプだけで検討したのではでないような音のする部品が使える。それがTA-DA3200ESの秘密の一端なのです。