AVQ&A

デジタルアンプの効果的エージング法
初校 070515



ご質問
一つ前のQ&Aで、いろいろなレベルにすると音がよくなるとのことですが、なぜですか。企業秘密でしょうか。
また、そもそもボリウムを上げておくとエージングが進む理由をもう少し詳しく教えていただけますでしょうか。


お答え

まあ秘密にしてもいいのですが、よい音で楽しんでいただきたいので公開しましょう。

S-Master PROは、音量調整をスイッチングアンプの電源電圧でやっています。つまりデジタル信号は全く同じまま、電源電圧を下げると音量が下がるという仕組みです。音量はデジタルデータに1以下の係数をかけてデータそのもののレベルを落としても実現できますが(デジタルアンプの場合、すくなからずそういう仕組みが使われています)、そういうことをすると有効bit幅が小さくなってしまい音質が劣化するので、それを避ける設計です。

そう書くと「ん?、TACTオーディオのまねか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。

じつはこの考え方は「TA-E9000ES」でソニーが1998年に実用化した「カレントパルスDAC」という方式で実用化しています。

カレントパルスDACは、通常の1bitDACが低音が出ないと言われる原因が、基準となる電源電圧の変動から来ていることをつきとめ、変換の基準を定電圧から定電流に変えたDAS-R10の設計原理 (カレントパルスDACといいます) を導入した始めてのAVアンプです。

さらにTA-E9000ESでは、その電流源の値を変えて、デジタルデータを変えずに音量を変える仕組みを世界初搭載しました。このときの名称を「カレント i ボリウム」です。

S-Master PROはパワーアンプですから、基準は電源電圧で、実際TA-DA9000ES、TA-DA7000ES、TA-DA9100ES全てが定電圧電源をもっています。そしてその定電圧電源の出力電圧を変えることでボリウム動作をしています。これをパルスハイトボリウムと命名しましたが(命名者はかないまるです)、パルスハイトボリウムを登載していることは S-Master「PRO」と呼べる条件のひとつです (もう一つはDCフェーズリニアライザーを登載していること)。


さて、では、ではなぜボリウムをあげておくとエージングが進むのか。

実は定電圧電源の出口には必ず電解コンデンサという部品がが入っています。ところがこれが曲者で、新品の状態ではまだ「レア」なのです。電圧をかけて「化成」という化学変化を促進して始めて音質が安定するという部品です。世の中のオーディオ機器の全てがエージングが必用な理由は、ほぼすべてのオーディオ機器に電解コンデンサが使われているからであると言っても過言ではありません。

勿論エージングは抵抗などの他のパーツや、シャーシですらビスの座りがよくなるなどいろいろな要因で進みますが、一番大きいのが電解コンデンサのエージングです (電解コンデンサは別名ケミコンといい、同じ意味です)。

さて、ではデジタルアンプが音量を上げておく必用がなぜあるか。
じつはアナログアンプでは電源電圧は固定で、常に最大値が掛かっています。また定電圧電源も搭載していないのが普通です。相当の高級機でも非安定電源です。TA-DA3200ESもそうです。したがってアンプの電源はけっしてきれいとは言えません。でもアンプ回路の設計がよいと、電源の汚さは音には出ないので、アナログアンプは定電圧電源がいらないだけ安価にできるとも言えます。

それはともかく、アナログアンプでは電源の電解コンデンサには終始フル電圧がかかりますから、電源を入れておくだけで化成が進みます。エージングに特別なノウハウはありません。電源スイッチを切らないこと。たまに大音量を出して電流を流してあげること。過エージングになったら一度電源を切ること、この三点だけです。

しかし、S-Master PROにおいては、その電圧が音量をコントロールしています。エージングに必要な「電圧をかける」ということは…。

そうです。音量をあげることなのです。音は出す必要はありません。でもボリウム値をあげることは必用なのです。

また電流を流すためにノイズも必要です。全チャンネル。なので、マルチチャンネル入力を使うか、2チャンネルアナログ入力にしてPL2Xなどを動作させるひつようがあるのです。


では電解コンデンサに最大電圧がかかるのはボリウムがいくつのときでしょうか。答は「0dB」のときです。なので0dBでエージングすれば、最も高電圧のエージングは進みます。

しかし、終始0dBだけでは、化成皮膜が単調になります。アナログアンプの場合は、逆にこれしかできないのですが、デジタルアンプはいろいろなボリウム値を設定することでいろいろな電圧の化成皮膜要素が構成され、多様、かつ柔軟な音質が作れます。

面倒くさいようですが、ひとつの電圧しか経験しえないアナログアンプの電源より、いろいろな電圧を経験させることができるS-Master PROアンプは、使い手が愛情を注げば注ぐほど喜怒哀楽が豊かになります。つまりユーザの愛情を正直に反映します。仕上げるのはユーザの方です。

最後に「聴く直前に一旦レベルをあげるとよい音がする」理由は、実際に使用するのに近い電圧付近の化成皮膜要素の純度を上げることができるからだと考えてください。実際はいろいろと複雑なことが起こるんですが、直感的にはこの理解で十分です。