[110906]
コンセントで音質が変わるのはなぜですか。またお勧めのコンセントはありますか。


ご質問

最近自宅システムで電源系の見直しをし、かなり成果が上がりました。それをやる前から、コンセントも電源ケーブルもそれなりに手を入れていたのですが、ちょっとしたキッカケでコンセントを数種類変えてみる機会がありました。(実は評論家U氏からコンセントをもらったことがキッカケ。)
すると、どう考えてもコンセントが音質を持っているかのごとく振舞っているとしか思えない観測結果を得ました。

  1. P社(旧M社)の超有名なホスピタルグレード
  2. O社(秋葉原の電線屋)のCPが高いと言われるもの(自宅で数年来使用)
  3. H社(USの電源アクセサリ会社)の超定番品
  4. PS Axxx社(こう書けば判りますよね)のAudio Gradeなるもの


1)を基準とすると


残念ながらA/Bテストを行っていないので、どこまで心理的要素を排除できているか自信がない部分もありますが、死ぬほど聞いているヘビーローテンションの楽曲を聴いての印象なので、そんなに極端にずれているということはないと思っています。

私も一応理工系出身(ただし電子電気系ではありませんが)なのですが、この現象の説明をすることができません。

もちろん、この業界にン十年おりますので、コンセントで音が変わることも電源ケーブルで音が変わることも体験値としては持っておりますが、コンセントが音質に影響を与えそうな要素は、プラグの機械的な接触とそれに伴う振動による影響くらいしか思いつかないのですが、その程度のことが上に書いたような周波数特性が変わって感じるような影響を及ぼすというのがどうも納得ができません。
もちろん、それは電源ケーブルもそうだし、ラインケーブルもスピーカーケーブルも同様に良く判らないのですが・・・


お答え


原因はまさに振動ですね。影響が入るルートは下記の二つだと思います。


1 )機械振動そのものが、糸電話効果でオーディオ機器の部品に伝わる

コードは樹脂の中に金属が浮いています。なので振動を糸電話のように伝えます。それでも横波 (ギターの弦が震える方向) は減衰しやすいと思いますが、縦波 (釘を叩いたときに叩いた方向に伝わる骨伝導波) に限れば恐らく何十メートルでも届くでしょう。

したがってオーディオ機器がもしこの振動に対する配慮を全くしていないと、振動は部品に伝わり、音質を変えますが、電源トランスの一次側まではとにかく金属でつながっていますので振動は来ます。

御質問の場合、振動源は床や壁。コンセントボックスに入った振動です。これが銅線を叩いて振動が起こります。

特に曲者なのがコンセントがプラグをはさむバネ部分の共振です。バネは音叉形状になっているのが普通なので、プラグの金属を挟んだままの状態で共振します

コードが床に這っていると床の振動を受けて横波が入ります。オーディオ機器に近いところで振動が入ると、樹脂の被服もろとも振動してオーディオ機器に入り込みます。

したがって金属はもちろん、コードの被服樹脂でも音が変わります。

ここで振動の減衰の大きい樹脂や金属で作られた電源コードは外来の振動を減衰させます。電力のことだけ考えれば、テーブルタップとアンプの間に入るたった2メートル程度のコードを変えて音質が大幅に変わるのは不思議でしょうが、ここがメカニカルな振動のアンプへの入り口と考えれば、如何に重要な位置にあるかわかるでしょう。

つまりコードがメカニカルなフィルタとなって動作して、音色を変えるのです。そう考えれば劇的に理解できるでしょう。

しかしコンセントはコードにとっては加振源なので、もっと影響が大きいと言えます。

ちなみにオーディオ機器のコードを直付けではなくてインレットをつけて設計すると、振動がここで減衰するので音質が悪くなりにくくなります。電気的には接点が増えていますが、メカ的には振動が大きくロスしてくれるんです。

もちろんインレットにはコードを変えて音をチューニングできる利点があります。ただし、

というメールをいただいたときは当惑しました。誌

それって間違ってると主増す。CDP-X5000って12万円ですからね。


2 ) 振動が電気接点を変調する

ところが、インレットを含めて、電源コードの接続点は全て電気接点であるという難しさがあります。つまり接触抵抗の存在です。

接触抵抗は振動で変調されます。すると電源波形に振幅変調がかかります。振幅変調は電源トランスの起磁力を変調しますので、トランスがその波形に応じて振動します。つまり電源ラインの振動は、なんとトランスを振動させるのです。

また電源トランスは必ず漏れ磁束が出ていますが、この漏れ磁束も同様の変調がかかります。漏れ磁束はアンプ内のグラウンドと信号のループに入り込むと起電力となります。回路の非線形部分で複調されて音になります。半導体回路は非線形要素の固まりですから、この影響はとても出やすいと言えます (真空管は線型性がよいのでこのタイプの振動には大変に強いと思います)。


というわけで結論です。コンセントは振動を元として、大きくは上記二点の原因で音質を変えます。なので、コンセント関係はとにかく振動的に見るとかなり音との相関が見えてきます

同じタイプでもコンセントメーカで音質が違うのは、ちょっとした振動面での違いが主因でしょう。有名な氷結処理は金属をアニールします。なので硬度や減衰率が変わり音質が変わります。

しかし加工があまりに高額で馬鹿げています。特に振動しやすいコンセントをお金をかけてアニールするのは超馬鹿げています。その前に考えることがたくさんあります。みなさんは安価でより振動しにくいコンセントを使った方がはるかに音がよくコストもセーブできます

たとえば、NEMA 5-20Rという規格があります。



こんな形です。これはT字プラグと平刃プラグが併用できるようになっているものです。

こんな感じ。キモはT字のほうの内部で、A,B,Cの三枚のブレードでできていることです。

コードがT字のとき (200ボルト系などに使います) は電極は@のスロットに。平刃のときは、電極はスロットAに入りますが、この三枚のブレードが互いに振動を止めているのがわかりますね。

このうちCのブレードは、コンセントの反対側の穴にあるブレードと並行なので、ものすごく振動しやすいんですが、この振動はAとBがガッチリ止めてしまいます。AとBも振動しますが、Cがれを止めています。

なのでこの構造はほとんど振動しません。普通のコンセントで聴こえるような「音がいいとか悪いとか」の次元ではなく、まず問題が一つ無い音という感じの音です。


私の試聴室は、壁は基本的にホスピタルの平刃 (有極、アース付き) です。これは通常の家庭がそうなので、あまり特殊にしたくないので壁は基本的に振動しているので丈夫が一番。が、テーブルタップは全てこのタイプです。テーブルタップは意図的にものすごく柔らかい電線を使って、壁からの振動を減衰させています。そしてそのコードはこのコンセントからはじまります。



実際にはこんなのを使っています。ホスピタルグレードではありません。コード側がホスピタルなので、こっちも同じにすると、強すぎてクセが出るので、あえて安物にしてあります。

ただし入手できるだけ発注し、秋葉も歩いて複数メーカのを集め、音のいいメーカのを選んではあります。ただ、コード側のプラグとの相性がありますので、メーカー名は今度にします。まあどこのを使ってもこのタイプなら本質的にいいですよ。

ちなみに大阪のデモで使った自作タップもこのタイプです (あ、作り方を公開する約束になっているんだ。もう一年以上約束違反です…)。

参考になりましたでしょうか。



御質問者の返信

かないまるさん

お休みの早朝に、しかも業務多忙のおりに、このような詳細な解説、感謝感激雨あられ、です。(古いですね。)

なるほど、機械振動がそのような伝播経路で信号系に影響を及ぼすのですね。特に「コンセントは加振源」という発想はまるでなかったので目から鱗でした。大きな目で見ると電源系が1つの非線形なフィードバックを形成しているようなものなのですね。

確かにコンセントのバネ性に着目すると、なるほど固有音質のようなキャラクタを持つのも判るような気がします。

ちなみに今回のコンセント変更の結論は、質問時には書きませんでしたが、最終的に選んだものはNEMA 5-20R規格のもので、我が家は全てこれに変わりました。

うーむ、なるほどちゃんと理屈は在った訳ですね。やはりオーディオは不思議にして楽しい世界ですね。