サラウンド勉強会




かないまる邸4チャンネル化
実施編 (10)

2チャンネル配置のツボ

更新 060730
初稿 060725


以上で2チャンネルは完成。かないまる式吸音ボード(吸音体)については大好評で、現在複数の方がチャレンジ中です。みなさんも、少なくともスピーカの存在感が消え「こちらがわ」に広がってくるサラウンド感までは、2チャンネルとして完成させてください。

少し2チャンネルの配置のツボをお教えしましょう。もう一度配置後の姿をごらんください。



この画像には2チャンネルオーディオを成功させるいくつかのポイントが写っています。テーブルの存在はあまり良くはないと思いますが、こんな状態でも非常にいい音がしています。それは原則ができているからです。


1)スピーカの角度は60度が基本である。

まずスピーカの左右が結構広いことに気付かれると思います。日本ではスピーカを45〜55度の開き角で設置することが多いですが、これは間違いと言っていいでしょう。

世界的な標準は60度。つまり正三角形の頂点で聴くのが正しいのです。有名なマルチチャンネルの推奨角度であるITU-R BS.775-1でも、フロントL/Rの角度は正三角形です。

ほとんどの録音スタジオも概ね正三角形です。したがって、再生側も録音現場と同じ角度にしないと、両耳のところにできる位相差、時間差が録音側の意図したとおりになりません。つまりちゃんとした音場ができません。

ところが日本では「中抜けになったときは、スピーカを少し狭めましょう」みたいなアドバイスが横行し、角度60度をキープしつつセンターの密度を確保する努力が奨励されていません。実は60度より狭めると、狭めるにつれどんどんエア感を失ってしまいます。

中抜けになるのは角度が広すぎるためではありません。次に述べるように、距離の詰めが甘い、壁などからの横反射を防止していない、スピーカを正面に向けすぎる、などが原因です。それらを対策すれば、60度でもセンター定位はピタっと決まります。


2) 左右のスピーカはリスナーからみて左右等距離、等角度に配置し、部屋との対称性の崩れは気にしないこと

これは通常左右のスピーカは等距離に置く、と言われていることの拡張です。実はこの表現は誤解の元です。なぜかというと、後ろの壁からも左右の壁からも等距離でないといけないような気がしてくるからです。

もちろんそういう点 (つまり部屋の中心線上の一点) にリスニングポイント=王様席を定めて、そこから等距離にスピーカを配置し、次項3)で述べる角度付けもきちんと行うのは理想のひとつです。そのようにすると王様席から外れたどこで聴いてもリッチな音が聴こえるのも不思議なことです。つまりリスニングポイントで音が良くなると、部屋中のあらゆる場所で音が良くなるのです。

そして実は、王様席は部屋の中心線上である必要は全くありません。自分が普段聴く位置でいいのです。そしてそういう位置に対して左右のスピーカを等距離に置き、角度もきちんとそろかるのがいいのです。これでも部屋中の音がよくなります。

このとき、左右のスピーカが後ろ壁や左右の壁から等距離でなくなることは全く気にする必要はありません。それは、ほとんど害が無いばかりか、実はスピーカと周辺の壁の反射音起因の固有音が分散するので、総合的なパワー周波数特性に強いクセがつかなくて、むしろ自然な音が得られるくらいです。

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ここで王様席以外の位置にいる人はどうなるのかという疑問が当然あるでしょう。すでにのべたように、王様席を定め、その位置で徹底的に追い込むと、不思議にそのリスニング位置を外れた場所で聴いてもよい音がするものです。サラウンド再生でも全く同じです。

たとえばデモのセッティングでどこかに王様席を定め、その王様席でいい音がしはじめると、部屋の隅で何となく音を聴いていた人が「おー、スゴイ」と言い出すことがよくあります。王様席でいい音がすると、そのデモは成功するのです。

なぜか。私もよく分かりませんが、おそらく左右のスピーカの波面がきれいな安定した干渉縞を作り出すようなイメージがありますね。安定した干渉縞はソースの左右の位相差を人間の耳に敏感に反応させる力があるような気がします。そういうとき人間はいい音と感ずる、そんなイメージがあります。



3)左右のスピーカの正面軸をリスニング位置の50センチ〜1メートル後方で交差させる (スピーカは内振りとなります)

これは非常に大切なセオリーです。私はハーベスを買ったとき、徹底的にその置きかたを研究しましたが、そのとき得た結論がこれです。王様席とスピーカの位置は正三角形。スピーカの正面軸の交差点は王様席より後ろですから、スピーカの正面軸交差点とスピーカ位置では二等辺三角形 (交点からスピーカを見込む角度は60度より小さい) となります。

ではどのくらい後ろで交差させるのか。これは音を聴いて決めますが、スピーカが四角い場合、その内側の側面がわずかに見えている程度が普通です。ラウンドした側面のスピーカは側面がないのでわかりにくいですが、長方形の外形線を書くと同じ結果になります。

日本ではこのことに無頓着すぎます。かなりの人がブライトといって、後ろ壁と平行に近い置きかたをしていると思いますが、これは間違いです。理由は、スピーカの指向特性が周波数によって違うため、リスニング位置での周波数特性がハイ落ちしてしまうからです。ハイ落ちは角度がずれ始めると個体差が大きくなります。つまり左右の特性がずれやすいわけです。

でも、正しい角度付近では、スピーカの前端をほんの1〜2ミリ動かしただけでステレオイメージが大きく変化します。これはおそらく部屋の反射音の返りが変化して、元の音との干渉が微妙に変わるせいかもしれません。王様席でグワっとステレオイメージができた瞬間、やはり離れた場所にいる人も「いい音だ」ということがあるのがその根拠です。

実はこの角度。ハーベスで発見して、その後会社の試聴室を持ったとき、買ってもらったB&W801-S3を自宅のハーベスと同じ向きに向けて全く同じ音場になることをまず経験しました。

ところがその後、海外出張し、いろいろと海外のスピーカの設置状況を拝見しましたが、驚くべきことに私が使っている内振り角は、録音現場、雑誌の評価ルーム、評論家、展示会での他社のデモなど、よい音を出していると評価の高いところはほとんど同じということが、まずまず欧州で確認できました。

北米は比較的音質に無頓着な人が多い国ですが、アメリカで神様視され、ファンの多いウイルソン社がデモ用に貸し出したときにサービスで設置している配置も同じでした。2003年1月のCESで、私は真空管アンプメーカのVTL社がシステム7 (日本価格350万円程度/ペア) を使ったデモブースに立ち寄りました。そこも私自身が常用している配置とそっくりでした。もちろん音場も同じです。私は非常に驚きました。私と全く同じ配置/音場を、世界のウイルソンが使っている。

VTL社の人に聴いたところ「配置をしたのはウイルソン社で、二つの配置を示したが、我々がこちらの配置を選んだ」といってました。

その年の2月には、同じシステム7を7.1チャンネル配置して、TA-DA9000ESの世界初のデモをしました。まだマトモな音の出ないTA-DA9000ESをまる三日かかって調整し、なんとか鳴らしたのです。低音が出ないので、ポートを延ばすという反則もしちゃいました。

ウィルソンはアメリカでは神様ですからね。そのスピーカのポートをいじったやつがいると、その場にいた北米販社の人たちは非常に非常に驚いていましたが、要するにいい音が出ればいいの(^^;)。それにユニットは全部欧州製なので、ウィルソンの音は実は「北米の音」ではありません。きわめて欧州的な音です。

本番初日のデキを確認して私は帰国しましたが、その後、ウイルソン社が自社のスピーカがひどい音でなっていないことを確認するために、ソニーのデモを聴きにきたそうです。その結果、デモには高い点をくれたそうですし、なんとTA-DA9000ESを二台買ってくれました。一台はデビッドウイルソンご本人が使う分だと聞きました。

また発売されたばかりの「狂気 (ピンクフロイド)」のSACDを持ち込み、制作者ご本人がソニーのデモシステム (つまりTA-DA9100ES+ウィルソン・システム7) で音を出し、結局SACD一枚全部聴いて帰ったとも聞いています。

英国の化け物オーディオ誌である「What Hi-Fi?」誌 (一時は英国でオーディオ誌の80%というシェアを持ち、アジア、ロシアの人まで読んでいるという化け物雑誌) のリスニングルーム、ドイツの雑誌社数社、オランダのポリヒムニアスタジオなど、基本的にちゃんとした音を出しているところは、ほぼ同じ角度になっていました。

日本ではスピーカを真正面に向けてみたり、極端な内振りを推奨したりと、録音現場の音造りを無視した配置が、ときとして奨励されるようです。しかしこれは、世界的に見て非常に特殊なスピーカの使い方で、特に録音側の意図に反することがあり、あまり感心できないと思います。

特別にそういう配置で使うことを意図したスピーカの場合は別として (それは再生芸術だといわれてしまえばそれまでですから)、注釈無しに「この配置がいい」とするのは原則外の理解を流布するものだと思います。


4)横反射をさける

今回かないまる吸音体(かないまる式吸音ボード)で処理したのは、横壁の反射音です。スピーカから近距離に壁があると、反射音が元の音と混ざり周波数特性を乱します。TA-DA9100ESの自動音場補償 (DCAC) が私の部屋で絶大な実験結果を出したのは、この横壁の処理ができていないのを修正してくれてしまったからです (あまりの効果に、これは売り物になると、即座にメインフィーチャにすることにしました)。

実は欧米では部屋を横長に使い、スピーカの両サイドの壁を遠くする配慮が奨励されています。上述の英国のオーディオ誌 What Hi-Fi?の試聴室も、ピュアオーディオ評価用の2チャンネルの試聴室は、部屋を横長に使っています (AV用の部屋はサイズが小さくてそうも行かないので、代わりに全壁が吸音性になっています)。

別の多くの雑誌の試聴室や、録音スタジオも拝見しましたが、左右壁の反射音には必ず何らかの処理をするか壁との距離をとっていました。

みなさんもなるべくスピーカの間隔を、開き角60度になるように努力し、壁が近寄ってしまう場合は、かないまる式吸音体(吸音ボード、吸音パネル)をお試しください。

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ポイントは以上です。これ以上のこまかい配置は山のようにありますが、これ以上のノウハウは企業秘密。でも、まずは上記をやってみてください。

音像のフォーカス感を追い込み始めると、スピーカを持って動かしたのでは動きすぎになり、「コンコン」とスピーカを叩くことにより移動させたり角度を変えたりすることになります。押して移動すると一度に5ミリくらい動いてしまいますが、大概それは動きすぎです。最後の最適ポイントは1ミリ刻み。それを動かすにはコンコンと叩くのがいいのです。

そこまで追い込むと、逆にふっとサービスエリアがひろくなるのです。不思議なものです。

高いケーブルを買い、その違いに唸るのがオーディオではありません。上記のようにキチンとスピーカを配置するほうが、圧倒的に、また本質的に音がよくなります。ケーブルなんて癖さえなければとりあえずなんでもいい。高いケーブルはそれなりによいものですが (あ、ぼったくり商品もありますが)、スピーカの配置がよくないと高いケーブルも生きません。


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